僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
才能あふれるカメラマンの彼と自分が似てるなんておこがましいけど、そう思わずにはいられない。

「ずっと、寂しかったんだね」

そんな言葉が、自然と喉からこぼれ落ちた。

人は、ひとりでは生きていけない。

ドアの隙間から見た、高安くんのほの暗い目つきを思い出す。

どんなに強がっても、失敗ばかりで逃げることに慣れてしまっても、心の奥底では誰かの温もりを求めている。

強い風が吹き、ザザン、と波の音がひときわ大きく鳴った。

なびく髪をおさえていると、いつの間にかカメラを胸元に下ろしていた天宮くんと目が合う。

潮風に揺らぐ前髪からのぞく茶色い瞳が、まっすぐに私を見ていた。

一緒に花火を見たあの日の目つきにどこか似ている気がして、ドクンと心臓が大きく跳ねる。

「……本当は、色をまったく見たことがないわけじゃないんだ」

真剣な目をしたまま、天宮くんが言う。

「そうなの?」
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