僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
すみれ
秋なのになかなか寒くならない気がしているうちに、十一月になっていた。
近頃、天宮くんは前にも増して、学校を休むようになっていた。
『なんで休んだん?』と二階堂部長に聞かれるたびに、『ただの風邪です』と答えている天宮くん。
そんなに風邪ってひくものだろうかと違和感を覚えたけど、天宮くんから深深入りしてほしくないような空気を感じて踏み込めずにいる。
一週間のうちにぐんと気温が下がった、十一月半ばの金曜日、一週間ぶりに天宮くんが写真部に来た。
その日の部活終わり、いつものようにパソコンをカチャカチャやっていた二階堂部長が、思い出したように言う。
「そうそう、これ誰か行かへん? 辰木先生から貰ってんけど」
二階堂部長がリュックから出してきたのは、百貨店の最上階で開催されている、アメリカの著名写真家たちの作品を集めた写真展のチケットだった。
「けっこう高いチケットやからありがたいんやけど、土日は私用事あんねん。辰木先生も、もっと早くに渡してほしいよな。誰か行ける人いる?」
近頃、天宮くんは前にも増して、学校を休むようになっていた。
『なんで休んだん?』と二階堂部長に聞かれるたびに、『ただの風邪です』と答えている天宮くん。
そんなに風邪ってひくものだろうかと違和感を覚えたけど、天宮くんから深深入りしてほしくないような空気を感じて踏み込めずにいる。
一週間のうちにぐんと気温が下がった、十一月半ばの金曜日、一週間ぶりに天宮くんが写真部に来た。
その日の部活終わり、いつものようにパソコンをカチャカチャやっていた二階堂部長が、思い出したように言う。
「そうそう、これ誰か行かへん? 辰木先生から貰ってんけど」
二階堂部長がリュックから出してきたのは、百貨店の最上階で開催されている、アメリカの著名写真家たちの作品を集めた写真展のチケットだった。
「けっこう高いチケットやからありがたいんやけど、土日は私用事あんねん。辰木先生も、もっと早くに渡してほしいよな。誰か行ける人いる?」