僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
写真展のあと、出口近くにあったエレベーターを待つことにした。

ここは八階なのに、エレベーターはまだ下の方にいる。来るのに時間がかかりそうだ。

男子高校生らしき三人グループが、ガヤガヤと喋りながら、私たちの背後で止まった。

大きな熊のぬいぐるみを抱えている。同じ階にゲームセンターがあるのだろう。

「あれ?」

キャップをかぶった男の子が、食い入るように私を見た。

「やっぱり。夏生さんじゃん」

記憶の奥底に埋もれていた声とその声が、あっという間にリンクする。

『あいつら、お前以外で新しいアプリのグループ作ったらしいよ』

ドクンと心臓がいやなふうに鼓動した。

中一のとき同じクラスだった、山西くんだ。

ほんのり茶髪になってるせいかあの頃に比べたらあか抜けているけど、顔そのものは変わっていない。

女子グループからハブにされている私を、おもしろがるように観察していた、クラスのカーストトップに君臨する男子。

「知り合い?」

山西くんの友達が、にやつきながら聞いている。

「そうそう、中学のときの。途中から来なくなったけど」

声音を下げることもなく、山西くんは言った。

どうでもいいけど、ちょっとおもしろい出来事だったかのように。

彼は当時も、ハブにされる私を、まるでショーでも見ているように眺めていた。

ハブにしている当事者よりも、そうやって端から見て楽しんでいる人の方が、ある意味残酷だ。

「元気だった? どこの高校行ってんの?」

「……青里」

「へえー」
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