僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
「…‥違うクラスだったのに、どうして? 山西くんに聞いたの?」

「ううん、聞いたわけじゃない。なんとなく知っただけで」

語尾にいくにしたがい、か細くなっていく天宮くんの声。

「苦しむ夏生さんを端から見るだけで何もできなかったこと、死ぬほど後悔してる」

ちらりと見えた天宮くんの表情があまりにも悲痛で、胸を打たれたようになる。

恥ずかしさもみじめな気持ちも吹き飛んでいた。

――『救いたいって気持ちがあって、行動に移せたなら、それはすごいことだよ。相手のことを救いたいという思いはあっても、見てるだけの人間の方が、世の中には多いから』

高安くんに冷たくされた時、彼に言われた言葉を思い出す。

ひょっとしたら、その言葉は、過去の天宮くん自身に向けられたものでもあったのかもしれない。

「だから写真のモデルになってほしいって、私に声をかけたの? 罪滅ぼしのために?」
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