僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
天宮くんは、ずっと私のことを知っていた。

接点なんてなかったけど、小学校から一緒だったのだから。

中一の二学期で引っ越した天宮くんと私が学校に行かなくなったのは同時期だから、私が不登校になったことまでは知らなかったのかもしれない。

だけどたぶん、何もできなかった後悔を、ずっと抱え続けていたのだろう。

天宮くんは、優しい人だから。

水槽の中の生き物を観察するように私を眺めながら、自分自身も傷つけていた。

高校で再会したとき、きっと驚いたに違いない。

目立つわけでも美少女でもない私に、突然モデルになってほしいと天宮くんが声をかけてきた理由が、ようやくストンと胸に落ちる。

天宮くんは罪の意識から、私と関わりを持つようになったのだろう。

胸の奥がズキッとした。

あり得ないと思いつつも、私は心のどこかで期待していたのかもしれない。

二階堂部長が言うように、ひょっとしたら、天宮くんが私を好きなんじゃないかって。
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