僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
だけど実際、天宮くんが積極的に私に関わってきたのは、罪悪感からだった。

天宮くんの優しさをうれしく思うと同時に、失恋したような気分になる。

気持ちを自覚する前に、始まることなく終わってしまった私の幻の初恋。

天宮くんが、ゆるゆるとかぶりを振った。

「罪滅ぼし? そんないいものじゃない。少しはそういう気持ちがあったのかもしれないけど、本当はもっと自分本位で身勝手な理由だ」

「自分本位で身勝手な理由?」

「ポートレイトをたくさん撮りたかった。……目が見えるうちに」

言い淀むように放たれた彼の言葉が、耳の奥深くに残る。

正真正銘のカメラマンである、天宮くんらしい理由だと思った。

だけど、そんなことよりも。

「目が見えるうちにって……?」

まるで、目が見えなくなる未来が待っているかのような言い方で。
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