僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
思わず食い入るように天宮くんを見ると、ようやく彼が顔を上げた。

あぐらをかいたまままっすぐ私を見つめる天宮くんを、窓から入り込んだ夕暮れの光が優しく照らしている。

「僕、霞病(かすみびょう)っていう病気なんだ。脳の異変からくる目の病気で、生まれてすぐに色覚は失った。二十歳になるまでに失明するだろうって、医者に宣告されてる」

時間の流れが止まったようだった。

それくらい天宮くんのそのセリフは衝撃で、私は呼吸すらままならなくなる。

「それが、この間の四月の話」

何でもないことのように、かすかな笑みさえ浮かべながら、天宮くんは続ける。

その視線の先にあるのは、薄闇でひときわ存在感を放っている、彼愛用の一眼レフカメラだった。

「だからできればもっと、夏生さんの写真を撮らせてほしい」
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