僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
彼が戸惑ったように視線を逸らした。窓から入り込んだ西日のせいか、目元のあたりが赤く見える。

「なんか夏生さん、変わったね」

「そうかな」

「うん。積極的になったというか、光って見える」

「光って……?」

ちょっと大げさだけど、素敵な比喩表現だ。

私はますます笑みを深めた。

私が変わったのだとしたら、天宮くんのおかげだ。

灰色の世界から、突然現れて、カメラ越しに光をくれた。

落ち込んだときやくよくよしているとき、颯爽と奮い立たせるような言葉をくれた。

天宮くんに抱いている感情はあいまいで、はっきりと名前をつけられない。

それでもたしかなのは、私にとって、彼がこの世界で一番特別な人だってこと。

「あ……、さっそくなんだけど、写真撮っていい?」

メンテナンスし終えたばかりのカメラを構え、恥ずかしそうに天宮くんが言う。
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