僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
うんと答えると、静まり返った病室内に、シャッターの音が響き始めた。

天宮くんに写真を撮られているこの時間が、やっぱり好きだ。

撮られるのは久々だから、なおさら身に染みる。

彼のカメラの中はこの世のどこよりも私が落ち着ける場所だと、改めて思う。

「この間、高安くんが部活に来たんだよ」

「え、まじ?」

「うん。授業には参加してないけど、部活だけきたの。写真部なのに私の写真が下手すぎて、気になったから来たって言ってた」

「なんだそれ。何気に毒舌だな」

「でもうれしかった。私の写真を、ちゃんと見ててくれたんだって分かって」

しんみりと言うと、天宮くんがカメラ越しに微笑んだ。

その笑い方が花がほころぶみたいに優しくて、思わず目を奪われる。

カシャッと、またシャッターの音がする。

そうして天宮くんは、立て続けに私の写真を撮った。

たわいのない話をしたり、ときに笑い合ったりしながら。

沈黙が続いて、カメラのシャッター音だけが響いている時間ですら心地よかった。

そんな穏やかなひとときを、消毒液のほのかに香る病室内で、私たちはともに過ごした。
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