僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
ここにいる全員の視線に、弱い心を踏みにじられて、死んでしまいそう。

だけど私は大きく息を吸い込み、ひとまず心を落ち着ける。

記憶の中からたぐり寄せたのは、天宮くんの奏でるシャッター音だった。

この世の何よりも私を奮い立たせる、あの耳心地のいい音。

怯むな、恐れるな、逃げるな。

恥ずかしいことじゃない。

みんなと同じようにハキハキ喋れなくていい。

すごいって思われなくていい。

これが私だ。

天宮くんが認めてくれた、ありのままの私だ。

「中学時代、私は不登校でした」

静まり返ったホール内に、もう一度私の声が響き渡る。

もう声は震えていない。

これなら大丈夫そうだ。

< 251 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop