僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
「――きっかけは、ささいなことでした」

徐々に皆の輪から外されていくときの、あのズタズタな疎外感。

クラスでひとり、死にかけの呼吸を繰り返す終わりのない毎日。

『ねえ、お弁当持ってない? ここで食べたのかな』『え、きも』

自分ひとりが、世界から断絶された絶望感。

劣等感がつのるばかりの日々。

苦しくて、悲しくて、消えてしまいたくて。

それでも、心のどこかでは救われたいと思っていた。

そしてある日突然現れた君は、カメラのシャッター音とともに、私を灰色の世界から救ってくれた。

「――高二になって私は写真部に入りました。ようやく居心地がいいと感じる場所を見つけて、私はこのままでもいいんだと、思えるようになりました」

無理に強くならなくていい、弱いままでいい。

弱い私ごと、君は色とりどりの光で包み込んでくれた。

散ったあとの踏み荒らされた桜に、春のうららかな陽射しが降り注ぐように。

この世に不必要な人間なんて、ひとりもいないんだ。

「――私も、人知れず泣いている誰かを救えるような大人になりたいと思っています」
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