僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
入院すら知らされていなかった二階堂部長は洟をすすりながら泣いていた。

いつもポーカーフェイスの佐方副部長も、声を押し殺して泣いている。

そしてその場には、高安くんもいた。

ずっと写真部に行っていなかった私は知らなかったことだけど、高安くんはあの日をきっかけに、ときどき写真部に来るようになったらしい。

クラスには行かずに、部活にだけ。

今は唇を噛みしめながら、下を向いている。

天宮くんのお母さんは、天宮くんが幼い頃から霞病という奇病に侵されていたこと、いずれは失明する運命だったことを語った。

そして、まさか失明するよりも前に亡くなるなんて、と寂しそうに声を足した。

「陽大が最期に撮った写真を現像して、写真部のみんなに見せたいと思ってカメラを確認したんだけど……。データがね、ひとつも残っていなかったの。亡くなる前に、ぜんぶ消しちゃったみたい」

天宮くんのお母さんが、残念そうに言う。
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