僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
「責めるつもりはないのよ。最期に彩葉ちゃんと過ごせたなら、あの子も満足だっただろうと思って、知っておきたかったの」

「……前々日は会いました。でも前日は会っていません」

「そうだったのね」

天宮くんのお母さんは穏やかな目をすると、首を傾げる。

「じゃあ、前日はひとりで出かけたのかしら? 夕方くらいにね、ふいにいなくなってしまったの。わりとすぐに帰って来たけど」

「そうだったんですか……」

どうしても会いたい人がいたのだろうか?

今となってはもう、知るすべもないけれど。

それでも、天宮くんが最期に会いたい人に会えたのならよかったと思う。

「……また来てもいいですか?」

いまだ混乱した気持ちのまま、気づけば別れ際にそんなセリフを口にしていた。

「ええ、いつでも待っているわ」

天宮くんのお母さんは、優しくそれを受け入れてくれた。
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