僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
驚いたのは、写真に映り込んだ景色に、見覚えがあったからだ。

ライオンのシンボルマークがてっぺんに描かれたマンション、生い茂る公園の木々、その向こうに遠く見える〝SANDEN〟という企業の広告看板。

この間見たばかりの景色そのものだ。

ドクドクと鼓動が加速し、全身の血流が湧き立つ。

真っ白いプロフィール画像の、くろすけ〟。

SNS上に残っている、彼女とのやり取りを一気に遡る。

初めて彼女が話しかけてきたのは、中三になって間もなくの頃だった。

進級しても学校に行くことができず、すべてにやる気が起こらず、SNSもただ眺めるだけになっていた私に、積極的に関わろうとしてきたのは彼女だけだった。

《はじめまして、くろすけです。仲良くしてください。》

何度かやり取りをしたあとからは、定期的に空の写真を送ってきた。

夕焼けの空、真昼の空、満月の浮かぶ空、曇った夜空。
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