僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
皆に見放され、ひとり灰色の世界に沈んでいた私を、天宮くんは気にかけ、人知れず導いてくれた。

そして、世界には目がくらむほど鮮やかな色があることを教えてくれた。

だけどそんな優しさのかたまりのような彼は、もういない。

もう、二度と会えないんだ。

あのシャッターの音を、もう聞けない。

ひたむきな茶色い目に射貫かれる瞬間も、永遠に訪れない。

震える指でスマホをスクロールし、〝くろすけ〟からの最後のメッセージを開く。


《ずっと笑っていて。》


私は唇を引き結び、嗚咽を無理にでも封じ込めた。

これ以上泣いたら、天宮くんが悲しむと思ったからだ。

君を失った悲しみはまだ当分癒えそうにないけれど――君が望むなら、悲しみを心の奥深くに沈めて前に進む。進まないといけないんだ。

もう泣かない。

泣くのは、これで最後にする……。
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