僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
窓から射す茜色の光、グラウンドから聞こえるサッカー部の声、定期的に鳴るチャイム。

当たり前のように君がいた日常。

だけど、君だけがもういない。

ふと見上げた窓の向こうを、はらはらと桜の花びらが舞っていった。

今年の桜はだいぶ散ってしまったけど、まだどこかに花をつけている木があるらしい。

長机に頬杖をつき、ぼんやりとその様子を目で追いながら、幻影となってしまった彼に想いを馳せる。

私はたぶん、天宮くんのことが好きだったのだと思う。

だけど天宮くんは罪滅ぼしのような気持ちで私と関わりを持っただけで、そういう気持ちはなかった。

天宮くんのカメラからあとかたもなく消えた私のポートレイトが、それを物語っている。

それでも特別な友達だったんじゃないかとは感じていた。

震える彼を抱きしめたとき、まるで私にすがるように、きつく抱きしめ返してくれたから――。
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