僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
ポケットからスマホを取り出し、画面を操作する。

表示したのは、病室で天宮くんとふたりで撮った写真だった。

驚いた顔をしている私の隣で、ちょっと恥ずかしそうに笑っている天宮くん。

私が持っている、唯一の、彼の撮った写真だ。

気を許すとすぐに込み上げてしまう悲しみを押し込め、画面を見つめながら、心の中でつぶやいた。
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