僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
とはいえ、順風満帆ではなかった。

赴任してすぐの学校では、保護者からのクレームでストレスを抱え、年度途中で休職する。

自分に教師なんて、向いてなかったのかもしれない。

何度もこのまま辞めてしまおうかと考えた。

そんな不安定な気持ちのまま転任したのが、母校の青里高校だった。

六年ぶりに足を踏み入れた母校は、ほとんど変わっていなかった。

旧校舎も部室棟として利用されていて、三年前に廃部になった写真部の部室も、そのまま残されている。

片付けるのすら面倒で、おざなりにされているのだろう。

部室の大半を占める長机、写真集や箱が詰め込まれた棚、乱雑に写真が貼られたままの黒板。

埃をかぶった懐かしい部室を見たとたん、泣きそうになっていた。
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