僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
赴任してすぐ、別室登校の担当になった。

かつて不登校だったことを、面談の際に校長に話したからだろう。

別室登校とは、不登校の生徒が、クラスとは別の教室で授業を受けるシステムだ。

別室登校を選択している生徒は、この学校に五人いた。

近藤くんはそのうちのひとりだった。

一年の二学期からはほとんど学校に来ていなくて、二年になってから別室登校を始めたらしい。

仔犬のような目をした、小柄な、優しげな男の子。

彼をひと目見て、優しすぎて傷つきやすいタイプの子だと分かった。

前年度の担任からの申し送りによると、HSP(ハイリ―・センシティブ・パーソン)という特性があるらしい。

生まれつき、感受性が強く敏感な気質を持っているそうだ。

平たくいうと、極端に傷つきやすいのだ。 

それゆえ小学校の頃から、人間関係がうまくいかず、学校に行ったり行かなかったりを繰り返しているらしい。

近藤くんの目はいつもほの暗かった。

かつて見た高安くんの目に似ている。
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