僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている

あの灰色の世界をさまよっている目。

別室登校を始めるようになったのは、これ以上、親に迷惑をかけたらいけないと考えたから。

この学校に居場所はない。

キラキラとした同級生たちの輝きがうらやましくて怖くて、自分がみじめで。

私には、手に取るように彼の気持ちが分かった。

「写真部に入ってみない?」

そう彼に提案したのは、居場所を学校に作ってあげたかったからだった。

「……写真部なんか、ありました?」

「今は廃部になってるけど、非公認で始めてみるの」

「……大丈夫なんですかそれ?」

「大丈夫よ。部室はあるんだから」

「はあ……」

腑に落ちないような顔の近藤くん。

「でも僕、カメラとか別に好きじゃないですし……」

「大丈夫、そういう子もいたから」

そうして私は、ある日の放課後、近藤くんを写真部の部室に連れて行った。
< 277 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop