僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
桜が生い茂る土手の真ん中に、十七歳の頃の私がいた。

空も、木も、花も、通行人も、みんな灰色なのに、私だけが鮮やかに色づいている。

黒い髪に、うっすら赤くなった頬、何かを喋っているような桜色の唇。

周りに色がないせいで、まるで私の形をした、色とりどりの光が咲いたみたいだった。

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