僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
「近藤くんのその優しさは、きっといつか誰かを救うよ。だから、弱い自分を責めないで」

あの頃、私も天宮くんに同じようなことを言われた。

その言葉は、それからずっと私の支えになっている。

近藤くんは困惑気味に私を見ていた。

それからまた、目元をうるませる。

「つらくなったときは、ここにきて。この部室は、いつでも待っていてくれるから」

「……はい」

小声で答えたあと、近藤くんがおずおずと口を聞く。

「…‥明日も来ていいですか?」

「もちろん。待ってるから」

すると近藤くんが、私に向かって初めて笑顔を見せた。

少しぎこちなさを感じさせる、無邪気な笑顔。

彼と今ほんの少しだけ心が通い合った気がして、気持ちが晴れやかになっていく。

だいじょうぶ、君はいつか這い上がれる。

人と同じではなくても、光射す道は必ずある。

そして私も、また這い上がるだろう。
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