僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
図鑑サイズのまったく同じ本が、二冊きれいに並んでいるのだ。

ROBERT FRANK――たぶん有名な写真家なんだろう。写真になんてたいして興味のない僕は、知る由もないけど。

同じ本を二冊も買うなんて部費の無駄使いだ。それほどすごい本なのだろうか。

あ、もしかしたら。

じっとその二冊の本を見比べた僕は、背表紙の平べったい方に手を伸ばした。

想像どおり、拍子抜けするほどの軽さだ。

「やっぱり。こっちは箱だけか」

箱入りの本が、箱と本、別々に置かれていて、二冊あるように見えただけだった。

カタン、と空のはずの箱の中から音がする。

よく見ると、箱の中には、取り出されている本の代わりに一冊のアルバムが入っていた。真っ黒な布製の、シンプルなデザインだ。

手持無沙汰にそのアルバムの表紙を開いてみる。
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