僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
その夜、私は一年ぶりにSNSを開いた。

久しぶりに日暈のことを思い出し、あのときの写真を見たいと思ったからだ。

小学生当時、お兄ちゃんと共用だったスマホで撮った日暈の写真は、SNSのプロフィール画像に設定している。

ログインすると、懐かしい画面が現れた。

〝halo〟というアカウント名のこのSNSは、不登校時代に始めたものだ。

学校にも家からも疎外された私にとって、このSNSは唯一の心のよりどころだった。

不登校仲間、いじめに遭っている人、友達や先生とうまくいっていない人。

現実ではめったに出会わない、同じような悩みを抱えている人たちが、SNS上にはたくさんいた。

そして、ひとりじゃないんだという安心感を私にくれた。

そういえば。

自分のフォロワーをチェックする。

〝くろすけ〟は、やっぱりいない。

〝くろすけ〟とは、私と同じく不登校だった女の子だ。

といっても一年くらい音沙汰がないので、いまだに不登校なのかどうかは分からない。

プロフィール画像は、たしか真っ白。

特徴的だったから覚えている。

境遇が似ているのもあって、私たちはたくさんのメッセージをやり取りした。

どうでもいい話から、ちょっと込み入った話まで。

だけど〝くろすけ〟は、ある日突然、さよならも言わずに消えてしまった。
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