僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
わかば
初めて写真部の部室に行った二日後。

放課後、私は緊張しながら、もう一度写真部を訪れてみた。

「夏生ちゃんっ! また来てくれたん?」

二階堂部長に盛大に出迎えられる。

佐方副部長はその日も長机の隅でレンズ磨きをしていて、天宮くんは愛用のカメラを首から提げたまま、分厚い写真集を眺めていた。

「来てくれたんだ」

そう言って顔を上げた天宮くんは、どことなくうれしそうだった。

私はまた、天宮くんのポートレイトの練習に付き合った。

それから二階堂部長と話をして、部室の窓から日の暮れていく景色を眺めて。
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