キミに伝えたかった二文字の言葉と99本の薔薇の花を。

戻りたい。


 今年、高校2年になった早乙女(さおとめ)りりは自室で一人、一冊の本を抱えながら泣いていた。


 ーーーーーー下校中。湿気に満ちていて、蒸し暑いじめじめとした6月の帰り道。


 急に天気が崩れ、傘を持ち合わせていなかったため雨宿で偶然入った本屋の中。店内をぐるりと見渡すとオススメの本紹介というコーナーが目に留った。


 最前列に並んだ、右から2番目に置かれている一冊の本へ無意識に手を伸ばす。


〔あの時、キミに伝えたかった二文字の代わりに花束を〕


 淡いピンク色の字で表紙にそう書かれていた。


 土砂降りの雨の中。金盞花(きんせんか)の花束を抱えながら綺麗に微笑み、涙を流している少女のイラスト。


 なぜだかとても惹かれ、本の裏返し、後ろにあったあらすじを読んだ。
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