息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
再会/その1


JAAOの研究所を後にした秋川と新田は、その足で岐阜へ向かった。
今回、秋川が律子と祐二の摩訶不思議な”紡がれた関係”を読み解くカギとなった貴重な意見を提供してくれた、律子のいとこと再会するためだった。
秋川は事前に高校教諭の克也には、JAAOの後に岐阜で会うアポイントを取っていたのだ。

”本来なら、さっき浦井さんからのメッセージを以って、新田には別部屋の一件を終いとさせるべきなんだろうがな…”

正直、克也との再会の場へこの新田を連れるか否かはかなり迷っていた。
しかし秋川には、この”別部屋”事件を新田に可能な限り共有させたかったのだ。

...


午後3時40分…。
秋川の愛車は不破神社の階段下にある、竹林を背にした駐車場に到着した。

「この上だよ。小学生だった律子さんが、"同じ年頃"だった祐二さんと言葉を交わした場所だ」

「はい…」

新田はうっそうとして暗い闇のような竹林をひと通り目にした後、境内への急な階段を見上げた。

「やっぱり先入観からか、普通の神社じゃないように感じてしまいますよ。なんか、異様な感じだなあ…」

新田は盛んに服の上から両手を左右交互にさすっていた。
それは、明らかに鳥肌を覚ます動作であった。

二人はゆっくりと20段はある石段を登って行った。

...


「…お互い初対面だったのに、彼女は彼を祐ちゃんと呼び、彼は彼女を律っちゃんと呼んだ…。ふう…、克也さんから話を聞いてさ、その話と祐二さんが結びついたら頭がこんがらったよ、さすがにな…」

並んで石の階段を一歩一歩踏む二人の会話は、どこか感慨に浸ったモードを醸していた。

「そうですよね。ネットオークションで落札したバイクの引渡し場所で初めて会ったはずの人が、記憶のかなたで接していた”あの子”だったと悟った時の律子さん、どれだけ衝撃を受けたことか…」

「うん…。新田、それが”さだめ”によって現実世界での出会いがもたらされたとしてだ、もし彼らが出会わないでいられた場合もあり得たら…。果たして二人はどちらが幸福だったんだろうか…」

「…わかりません、自分には。秋川さんはどっちだと思うんすか?」

「…どっちだろうが、俺には答えることができないよ」

新田の問いに対する秋川の返答はやや屈折していた。




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