息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
再会/その3


”はは…、克也さんと新田がタメだったとはな…”

「でも自分ら、割と世代間のシンパシー取りやすいんっすよね…。生まれた時はバブル真っ最中。親はギンギンギラギラだったろうけど、ウチらが物心ついた時はもう失われた10年が口を開けて待ってた時分ですもん。ねえ、克也さん…」

「その通りですよ、新田さん。逆に僕らの親は高度成長期真っただ中で育ち、中学上がった頃には、エアコンとビデオデッキとオーディオが自分の部屋に揃ってたそうですもん。それがねえ…、ハハハ…」

”彼らの会話はホント、胸に届く…。自分はこいつら本人と親の中間世代だから、微妙にイーブンなんだよな(苦笑)”

秋川は、二人の兄貴格という立場を積極的に迎い入れて話をすすめた。

...


「秋川さん、律っちゃんが感謝してましたよ。”あの人は私のあらゆる可能性までを心配してくれていた”と…」

「はは…、”ストーカー”ギリギリのマネまでした甲斐があったかな。…克也さん、ここで一区切りつけたいんだ。ストーカーまがいは疲れるしね、正直…。オヤジには過酷だ」

「…秋川さん、律っちゃんは大丈夫ですよ。バイクの煙は出ない。もう…」

「言い切れますか?克也さんは…」

「煙はです。ただ…」

「ただ…、他に何か起こり得るというんですか、まだこの後も…?」

ここでは新田が克也に尋ねた。

...

「JAAOの浦井さんがおっしゃっていた通り、自分も律っちゃんと祐二さんの”コンタクト”は続いていると思ってるんです。要は無意識の中でまた作用を起こし、何らかの現象ってことはあり得るんじゃないかと…。でも、それはもう刑事さんたちが担当した一連の事件とは切り離していいんじゃないですか。その時は、その所轄が新たな事件として捜査するでしょうし…」

「浦井さんにもそのように言われましたわ。…じゃあ、新田、そう言うことにするか」

「ええ。そうしましょう」

”これで終わりだ…”

この思いは二人ともは同じだったが、秋川の認識はあくまでも”終わりにする”であって、”終わりになる”ではなかった…。


...


二人の刑事は、浦井から受けた解説を掻い摘んで克也に告げた。

「…いやあ、ご丁寧にありがとうございます。浦井さんには電話で大まかには報告を受けましたが、実際に現場で警察官として立ち会われたお二人に、こうしてお話いただけるのは大変有意義ですから…。凄く参考になります」

「…克也さん、あなたには感謝しているんです。律子さんを追ってああいう局面が待っていた訳ですが、克也さんからのお話を伺っていなかったら、我々の対応は間違いなく違っていた。JAAOへも何かとご協力いただいたし、できれば今後の研究に役立ててもらえたらと思っています」

「いやあ、今回は文字通り貴重なデータをいただきました。おかげで自分なりに、いろいろ”見えてきた”ことろかもありますよ」

「そうですか…。よろしかったら、どんなことかさわりだけでもお教え願えませんか?」

この時の秋川は、JAAOの見解を噛み砕いた克也のダイレクトな意見を聞きたい気持ちに駆られていた。

それはただ純粋な気持ちからだったが…。



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