息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
再会/その4


この日3人は、克也の勤務する高校の正門で落ち合い、歩いてすぐの公園で話の場を持っていた。

「…浦井さんからJAAOさんの検証結果を伺って、まずは目から鱗が落ちました。今まで自分の思い描く仮説などは所詮、妄想の域なんだろうかって、結構、自虐気味なところがありましたからねえ…(苦笑)」

ベンチに腰を下ろし、煙草に火をつけていた秋川が思わず吹き出しそうになっていた。

”まあ、この若さであの類の持論を真顔で話されたら、普通は引くわな(苦笑)”

「じゃあ、克也さんはJAAOの報告から勇気をもらったって訳だ」

「はは…、そう言うことです」

「なら、俺と一緒だよ。まあ、立場は違うけど。はは…」

新田はそう言って健康そうな笑い声をあげると、秋川も克也もそれに連られてクスクスと声を出して笑っていた。

...


「…でも、実際の諸外国での事例を知り、少なくとも科学で説明できない不思議な現象は、いくらでも起こりうる土壌をこの地球は有していると確信できました。そして現実に、コトは数多く起こっていると…」

「克也さん…」

「…ただ、人間がそれに気付かないだけ…、いや、気づこうとすることそのものを避けているんだと…、そう浦井さんはおっしゃっていました。人類の英知は、既に月や火星にまで達していますよね。だが反面、自分たちが生きている地球内部のことを、人間はどれだけわかっているのかと…。まるで地球の主(あるじ)気取りしている人間は少なくない」

この時点で克也はやや顔を赤らめ、若干興奮気味の口調になっていたのを、秋川は見逃さなかった。

「…海に目を向ければ、クジラやイルカ、シャチなどの哺乳類が極めて高い知能を持ちえてることは遥か昔から周知されていましたよね。視界に頼れない海中において、音を通じたコミュニケーションをとっているとか…。と言っても、それは動物のわりにはってニュアンスですよ、大体は…」

”言えてるよ。結局のところ、未だに人間は天動説から脱皮で来てないのかもな…”

一方の秋川の方は、妙に冷めた捉え方で克也の熱弁に耳を傾けていた。





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