息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
帰点と起点/その2


その着信は明らかに東署内の電話番号からだった。

「もしもし…」

「あっ…、秋川さんっすか?」

”新田だ…”

秋川には元相棒の第一声で、いつも用件の主旨は概ね予想がついたが、この時は単なる定期報告ではないとすぐに察することとなる。

「おお、新田どうした。今日は非番でな。モードチェンジが必要な用なのか?」

「はあ…、それが…。…津藤律子さんが昨夜から、また失踪したようなんです」

「なんだってー‼」

秋川のオフモードは一瞬で吹っ飛んだ…。

...


「…じゃあ、おふくろさんがお前に直で電話連絡を…」

「ええ。前回がありましたからね。今のところは20代半ばの大人の女性が一晩、連絡なく家を開けたにすぎないってことなんでしょうが…。ご両親は相当動揺してて、捜索願も真剣に考えています。俺、さすがにどうしたものかと思って」

「バイクは⁉彼女のバイクはどうなんだ!」

「…バイクも一緒です。あの事件の後、アパートから千葉市内の実家に戻って、あのバイクは庭先に停めていたそうで…。夜中にエンジンをかければ室内には聞こえる距離だったんですが、家族は全く気付かなかったそうですよ」

「手紙とか…、なんか書き残したものはなかったのか?」

「今回は何もなかったようです。ケータイは前回同様、自分の部屋に置いてあったそうですが…」

「よし…、捜索願いを出し手もらった方がいい。急げ‼」

「わかりました。それで、あのう…」

「俺は今から薄井さんに連絡取って知らせるよ。あっちもあれ以来音無しだったそうだが、まずは報告しておく。それと、向井時枝さんにも電話してみる。お前は津藤さんの家へ行って、部屋の中のパソコンとか、前回みたいに何か形跡が残されていないか調べさせてもらえ」

「了解しました。また連絡します!」

「頼むぞ!」

”再び始まったということなのか、ひょっとして…‼”

秋川は全身から血の気が引くのをはっきりと感じていた

と、その時だった…。


...


”ブルルーン、ブルルーン…”

新田との通話を切って、右手に納まっていたケータイが再び着信を告げた…。





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