息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
その4
救急車が信用金庫に到着したのは、正午過ぎだった。
その時点では、煙状の白い”モノ”も消え去り、強烈な悪臭も収まっていた。
やや落ちつきを戻しつつあった小峰さんを、救急隊員が素早く担架で搬出し、騒動はようやく収束した。
白い煙と悪臭の渦の中にいた律子は終始、席に座ったままだった。
そして、机の上や足元には、先ほど小峰さんが津子めがけて投げつけた、一万円札が散乱していた。
金融機関で紙幣が散らばったまま、十数分も放置されていることが、尋常ならざる事態をリアルに物語っていたと言える。
...
まるで蝋人形のような無表情で虚脱状態の律子を、皆が遠巻きに視線を向けている。
その律子の右後ろからに寄って、副長の江田が肩越をポンと叩いた。
「津藤さん、津藤さん…」
数秒おいて、両肩をぴくっと上げ、やっと律子は我に戻ったようだった。
そして間をおかず、「ううっ、頭が、痛い…」と、両手を頭部に当て、うつむく律子…。
「しばらく、応接室で横になってなさい」
支店長の片桐は、両手で塞がれている律子の表情を覗き込むように言葉をかけた。
ゆっくりと席を立ち、女子職員二人に支えられた律子は応接室に入って行った。
救急車が信用金庫に到着したのは、正午過ぎだった。
その時点では、煙状の白い”モノ”も消え去り、強烈な悪臭も収まっていた。
やや落ちつきを戻しつつあった小峰さんを、救急隊員が素早く担架で搬出し、騒動はようやく収束した。
白い煙と悪臭の渦の中にいた律子は終始、席に座ったままだった。
そして、机の上や足元には、先ほど小峰さんが津子めがけて投げつけた、一万円札が散乱していた。
金融機関で紙幣が散らばったまま、十数分も放置されていることが、尋常ならざる事態をリアルに物語っていたと言える。
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まるで蝋人形のような無表情で虚脱状態の律子を、皆が遠巻きに視線を向けている。
その律子の右後ろからに寄って、副長の江田が肩越をポンと叩いた。
「津藤さん、津藤さん…」
数秒おいて、両肩をぴくっと上げ、やっと律子は我に戻ったようだった。
そして間をおかず、「ううっ、頭が、痛い…」と、両手を頭部に当て、うつむく律子…。
「しばらく、応接室で横になってなさい」
支店長の片桐は、両手で塞がれている律子の表情を覗き込むように言葉をかけた。
ゆっくりと席を立ち、女子職員二人に支えられた律子は応接室に入って行った。