息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
隣の部屋


秋川は、さらに新田の話を聞いた。

「どうやら隣の住人、ガイシャに覗かれていたらしいんです。あくまで隣に住んでるOLの言い分なんで、大家の方は事実関係を明確に把握してないらしいんですけど…」

「それで、昨夜もトラブルがあったそうでう。なんでも、ガイシャがOLのバイクの臭いを嗅いでいたとかで…。ストーカー行為だとOLは大騒ぎして、1階の大家が外に出て2人を仲裁してなだめたらしいんですよ」

「で、ストーカー扱いされた男が、今朝になって仏って訳か。よし、隣に行ってみようか」

「僕もさっき、インターフォン鳴らしたんですがね、留守でしたよ。まあ、OLでこの時間ですからね、仕事でしょうから」

「そういうことになるよな、やっぱり…」

そんな会話をしながら、二人は隣のそのOLが住むという部屋の玄関前に向かった。
そして…、何気なく、秋川は玄関ドアの表札に目をやると…。
”津藤”、たしかにそういう名字であった。

”なんということだ…。ひょっとして、今さっき赴いた信金の女子職員の部屋じゃないのか?”

秋川は胸の中でこう叫んだ。
現場の部屋に戻って大家にフルネームを尋ねると、「津藤律子さんです」とあっさりだった。

”彼女”の部屋に間違いなかったのだ…。





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