息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
加速する不安/その1
小峰夫人の葬儀から戻った副長の江田は、支店長席の片桐と小声で話をしていた。
「…じゃあ、津藤君の親もこの間、連絡が取れていないんですか?」
江田の問いに、片桐は”ウン”とだけ言って腕組みをしている。
「携帯も繋がらないとなると、これは、部屋に入ってみる必要がありますかね」
江田は支店長席に両手をあてて、片桐に促すように言った。
まもなくして、支店のフロアに再び刑事の秋川と新田が現れた。
...
「いやあ、朝方はどうも…」
といった表情で、秋川が支店長席にお辞儀した。
それを見た受付の職員のが事務作業の手を止め、支店長に伝えると、刑事に気付いた片桐は立ち上がって会釈した。
そして、会議室に入ってもらうよう職員に指示し、自らも江田と共に会議室に向かった。
...
「そうですか…。連絡も取れない状態が続いているんですか」
「ええ…。彼女の親も心配しているので、合鍵を持ってきてもらって部屋に入ってみようかと先程、話していたところです」
片桐は秋川に状況を報告し、今後の対応を率直に打診した。
秋川は右横に座っている新田に目で合図してからこう言った。
「では、そうしてください。…実はここに伺う前、若い男性が亡くなった現場に行ってましてね。それが、津藤さんが住んでいるアパートでして、死亡したのは隣の部屋の住人だったんですよ」
びっくりした表情の片桐と江田は思わず顔を見合わせていた。
そして二人が口を開く前に、秋川が穏やかな口調で続けた。
「まあ、今回は偶然なんでしょうが。まだ、ここだけの話にしておいてください。一応、成り行き上、お話したまでですので」
二人は無言で頷いていた。
まず、こう前置きした後、やや神妙そうな表情でさらに続けた。
...
「…今のところ男性の方は、事件性があるかどうかも何とも言えませんが、できれば私どもも、津藤さんの部屋を確認される際、立ち会わせていた抱けると助かります。よろしいでしょうか?場合によっては、彼女の親御さんも、捜索願をという事にもなる可能性もありますからね」
「そう言うことなら江田君、なあ…」
「はあ。津藤君の親御さんには了解とりましょう」
片桐と江田はそう言いながらともに頷いていた。
結局、律子の親にはこの日の午後、アパートに来てもらうよう連絡し、秋川らはいったん支店を後にした。
支店内は一見いつもと変わらぬ風景であったが、皆、律子のことが気になっている様子で、職場には重苦しい空気がのしかかっていた。
小峰夫人の葬儀から戻った副長の江田は、支店長席の片桐と小声で話をしていた。
「…じゃあ、津藤君の親もこの間、連絡が取れていないんですか?」
江田の問いに、片桐は”ウン”とだけ言って腕組みをしている。
「携帯も繋がらないとなると、これは、部屋に入ってみる必要がありますかね」
江田は支店長席に両手をあてて、片桐に促すように言った。
まもなくして、支店のフロアに再び刑事の秋川と新田が現れた。
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「いやあ、朝方はどうも…」
といった表情で、秋川が支店長席にお辞儀した。
それを見た受付の職員のが事務作業の手を止め、支店長に伝えると、刑事に気付いた片桐は立ち上がって会釈した。
そして、会議室に入ってもらうよう職員に指示し、自らも江田と共に会議室に向かった。
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「そうですか…。連絡も取れない状態が続いているんですか」
「ええ…。彼女の親も心配しているので、合鍵を持ってきてもらって部屋に入ってみようかと先程、話していたところです」
片桐は秋川に状況を報告し、今後の対応を率直に打診した。
秋川は右横に座っている新田に目で合図してからこう言った。
「では、そうしてください。…実はここに伺う前、若い男性が亡くなった現場に行ってましてね。それが、津藤さんが住んでいるアパートでして、死亡したのは隣の部屋の住人だったんですよ」
びっくりした表情の片桐と江田は思わず顔を見合わせていた。
そして二人が口を開く前に、秋川が穏やかな口調で続けた。
「まあ、今回は偶然なんでしょうが。まだ、ここだけの話にしておいてください。一応、成り行き上、お話したまでですので」
二人は無言で頷いていた。
まず、こう前置きした後、やや神妙そうな表情でさらに続けた。
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「…今のところ男性の方は、事件性があるかどうかも何とも言えませんが、できれば私どもも、津藤さんの部屋を確認される際、立ち会わせていた抱けると助かります。よろしいでしょうか?場合によっては、彼女の親御さんも、捜索願をという事にもなる可能性もありますからね」
「そう言うことなら江田君、なあ…」
「はあ。津藤君の親御さんには了解とりましょう」
片桐と江田はそう言いながらともに頷いていた。
結局、律子の親にはこの日の午後、アパートに来てもらうよう連絡し、秋川らはいったん支店を後にした。
支店内は一見いつもと変わらぬ風景であったが、皆、律子のことが気になっている様子で、職場には重苦しい空気がのしかかっていた。