息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
約束された情景/その2
「でも、本当に久しぶりね。律っちゃんのお母さんとも、5年前に法事で会ったきりだしねえ。持病の心臓の方はどうなのかしら…。元気でやってる?」
どうやら今のところ、母から連絡は入っていないようだったので、律子はまず胸をなでおろした。
「ええ、なんとか大丈夫です。芯は図太いですから、お母さん(笑い)」
「まあ…(苦笑)」
達子はすっかり世間慣れした律子に、興味津々の様子で、更に”カマ”をかける。
...
「律っちゃん、今何のお仕事してるの?話し方もソツないし、なんかのセールスかしら?化粧品とか」
律子は屈託のない笑みを浮かべたあと、きりっとした口調で返した。
「そんなガラじゃないですよ、私…。地味なOLです。地元の信用金庫に勤めているんです」
達子は別に意外そうな顔もせずに、間髪を入れず律子に話しかける。
「そう、手堅くていいじゃない。そう、そう、なんならウチの息子とお付き合いしてもらおうかしら?覚えてる?克也、あなたより3つ年上だったわよね。確か…」
律子は昨夜、脳裏に戻ってきた”あの記憶”によって、克也はすでに頭の中で“オン”されていた。
そう、すでに…。
...
「克也君、ああ、覚えていますよ。おとなしくて、女の子にもててましたよね。今はなにされてるんですか?」
”全く如才ないわねー、この子”
達子はまんざらでもない表情で答えた。
「今は高校の教師やってんのよ。田舎町だからそれこそ細々だけど…。そういえば、律っちゃんのこと、いまだに話すのよね、時々。あなたをウチで預かってた時のことなんだけどね…」
律子は今までの穏やかな表情を一変させた。
「”あの日”のこと、よっぽど不思議に思ってたらしくてねえ…。忘れられないんだって、不破神社で起きたこと。ちょうど夕方5時だったわね、覚えてる?」
達子はまさに井戸端会議のノリであったが、律子は違った。
食い入るような目で、おばの顔を見つめ、耳を逆立てていた。
「でも、本当に久しぶりね。律っちゃんのお母さんとも、5年前に法事で会ったきりだしねえ。持病の心臓の方はどうなのかしら…。元気でやってる?」
どうやら今のところ、母から連絡は入っていないようだったので、律子はまず胸をなでおろした。
「ええ、なんとか大丈夫です。芯は図太いですから、お母さん(笑い)」
「まあ…(苦笑)」
達子はすっかり世間慣れした律子に、興味津々の様子で、更に”カマ”をかける。
...
「律っちゃん、今何のお仕事してるの?話し方もソツないし、なんかのセールスかしら?化粧品とか」
律子は屈託のない笑みを浮かべたあと、きりっとした口調で返した。
「そんなガラじゃないですよ、私…。地味なOLです。地元の信用金庫に勤めているんです」
達子は別に意外そうな顔もせずに、間髪を入れず律子に話しかける。
「そう、手堅くていいじゃない。そう、そう、なんならウチの息子とお付き合いしてもらおうかしら?覚えてる?克也、あなたより3つ年上だったわよね。確か…」
律子は昨夜、脳裏に戻ってきた”あの記憶”によって、克也はすでに頭の中で“オン”されていた。
そう、すでに…。
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「克也君、ああ、覚えていますよ。おとなしくて、女の子にもててましたよね。今はなにされてるんですか?」
”全く如才ないわねー、この子”
達子はまんざらでもない表情で答えた。
「今は高校の教師やってんのよ。田舎町だからそれこそ細々だけど…。そういえば、律っちゃんのこと、いまだに話すのよね、時々。あなたをウチで預かってた時のことなんだけどね…」
律子は今までの穏やかな表情を一変させた。
「”あの日”のこと、よっぽど不思議に思ってたらしくてねえ…。忘れられないんだって、不破神社で起きたこと。ちょうど夕方5時だったわね、覚えてる?」
達子はまさに井戸端会議のノリであったが、律子は違った。
食い入るような目で、おばの顔を見つめ、耳を逆立てていた。