息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
追跡/その2
神社を後にした秋川は、その足で律子が前日訪れたはずの親戚である達子の家に赴いた。
「まさか、律子ちゃんが家出してて、警察沙汰になってるなんて知らなかったから…。うっかり、そのまま返しちゃんたんですよ」
達子は警察が自分の家にまで調べに来たことで、かなり戸惑っている様子だった。
「いや、奥さん…、別に家出とかという訳ではないんですが、周りで事故とかおきましてね、こちらも役目上、お聞きしたいことがありまして。まあ、たまには遠出でもして息抜きしたいから、それにかこつけてこちらに赴いた次第でしてね。…いやあ、それにしても、ここは空気がおいしい。やはり、格別ですな。心が洗われる…」
秋川は達子の警戒感を拭うように、言葉を矢継ぎ早に発した。
「あらまあ、刑事さん、お上手ね。まあ、ここら辺はまだまだのどかでしょう。もともと、信心深い風土が残る土地柄でしてね…。いろいろ伝説っていうか、言い伝えっていうんですかね、そういうのも、ここに住む人間は結構信じてるんですよ」
達子は期せずして、この地域の”コト”をポンポンという感じで話し始めた。
秋川は、ここがタイミングとみて切り出した。
...
「…そういえば奥さん、律子さんのお母さんが言うには、お宅で幼い律子さんを預かっていた時、ここの近くの神社で何か妙な出来事があったとか…」
達子は”そうなのよ”、と大きく頷いてから、早口で話し始めた。
「それが、今思い出しても不思議なんですよ。その日は神社で近所の子供たちと一緒に、ぽこぺんやってたらしいんですが…。律子ちゃん、夕方5時ちょうどに鬼になったんだけど、”裕ちゃん”って子が鬼を代わってくれたからって、祠の前を離れてね。そしたら、他のみんなが鬼がいなくなったって騒ぎだしたそうで…」
達子が話してる間、秋川は手にしていたコップに注がれていた生ぬるくなったであろう麦茶に視線を落とし、こう心の中で呟いた。
”何かがわかる…。しかし、それは一体…”
この時の秋川の正直な気持ちは、刑事としての捜査というよりも、個人として、心の奥で知りたいというどうしようもない欲求も交錯していた。
神社を後にした秋川は、その足で律子が前日訪れたはずの親戚である達子の家に赴いた。
「まさか、律子ちゃんが家出してて、警察沙汰になってるなんて知らなかったから…。うっかり、そのまま返しちゃんたんですよ」
達子は警察が自分の家にまで調べに来たことで、かなり戸惑っている様子だった。
「いや、奥さん…、別に家出とかという訳ではないんですが、周りで事故とかおきましてね、こちらも役目上、お聞きしたいことがありまして。まあ、たまには遠出でもして息抜きしたいから、それにかこつけてこちらに赴いた次第でしてね。…いやあ、それにしても、ここは空気がおいしい。やはり、格別ですな。心が洗われる…」
秋川は達子の警戒感を拭うように、言葉を矢継ぎ早に発した。
「あらまあ、刑事さん、お上手ね。まあ、ここら辺はまだまだのどかでしょう。もともと、信心深い風土が残る土地柄でしてね…。いろいろ伝説っていうか、言い伝えっていうんですかね、そういうのも、ここに住む人間は結構信じてるんですよ」
達子は期せずして、この地域の”コト”をポンポンという感じで話し始めた。
秋川は、ここがタイミングとみて切り出した。
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「…そういえば奥さん、律子さんのお母さんが言うには、お宅で幼い律子さんを預かっていた時、ここの近くの神社で何か妙な出来事があったとか…」
達子は”そうなのよ”、と大きく頷いてから、早口で話し始めた。
「それが、今思い出しても不思議なんですよ。その日は神社で近所の子供たちと一緒に、ぽこぺんやってたらしいんですが…。律子ちゃん、夕方5時ちょうどに鬼になったんだけど、”裕ちゃん”って子が鬼を代わってくれたからって、祠の前を離れてね。そしたら、他のみんなが鬼がいなくなったって騒ぎだしたそうで…」
達子が話してる間、秋川は手にしていたコップに注がれていた生ぬるくなったであろう麦茶に視線を落とし、こう心の中で呟いた。
”何かがわかる…。しかし、それは一体…”
この時の秋川の正直な気持ちは、刑事としての捜査というよりも、個人として、心の奥で知りたいというどうしようもない欲求も交錯していた。