息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
閉じ子の伝説/その5
「さらに、それはここの村人が障害を持って生まれた子を地に捧げているおかげだと…」
「…その認識はこの地方の民にも植え込まれた訳なんですね?」
ここで秋川は自然と頭に浮かんだ推測を口に出して克也に確認したが、彼の答えは明快だった。
「その通りです」
...
「…それでですね、江戸時代にここを収める藩が、天候不順とかでその年の収穫が悪いと、”捧げもの”が体の不自由な子ばかりで、地の神が怒っているからだと指摘してきました。で、健康な子供を捧げて鎮めろと要求してきた…」
秋川はちょっと嫌な予感がした…。
「…村を治める藩の役人達に逆らうことのできない村人たちは悩んだ末、結局は順番制を選択したようなんです。そこで最初は、村長の家から子供を差し出すということで…。そのうちに幕府の方でも、この地は国が折れ曲がって裂けない為に守護してくれる神聖な地という解釈が定着しました。幕府はその年が全国的に豊作だと、ここの藩へ恩賞を与えたそうですよ」
「時の幕府がこの地方を特別な場所に捉えたんですか…」
「…ええ。しかし、ここと遠く離れた場所でも地震や噴火が頻繁に起こったりする時期になると、不安に駆られた幕府の命令を受けた藩が子供を捧げるよう強要してきたんです。さすがの村人たちも、自分たちの住んでる場所からはるか離れたところの天災までは勘弁してくれと頑なに拒んだようですよ」
”なんてこった…”、秋川は眉間にしわを作り、首を何度も横に振っていた。
...
「…しかし、幕府の命なんで、藩主だって村人がどんなに懇願しようが聞き入れる訳がありませんよ、あの時代ですから。結局、藩主は申の刻、今でいう午後5時までに神社へ生贄を捧げないと、藩が強制的に手を下すと通告したんです。村人は全員で話し合い、自らで選ぶことはできない。役人が選んだ子で皆納得しようということになった…。苦渋の決断だったでしょうね。しかし…」
克也の話では、通告の時間には6歳の男の子が神社の祠の前で息を引きとっていた。なんと、その子は自分から進んで犠牲になった。”順番”の子は女の子で、かわいそうだからと身代わりを志願したんだろうという言い伝えだと…。
「おそらく子供ながらに、役人は今度順番が回ってくる子を選ぶだろうと考えたんでしょうね…」
「なんとも痛ましい限りだ…。やるせないな」
秋川はここまで聞き終わると、かなり感情移入して左のこぶしを握りしめていたが、”ポイント”は聞き逃さなかった…。
「さらに、それはここの村人が障害を持って生まれた子を地に捧げているおかげだと…」
「…その認識はこの地方の民にも植え込まれた訳なんですね?」
ここで秋川は自然と頭に浮かんだ推測を口に出して克也に確認したが、彼の答えは明快だった。
「その通りです」
...
「…それでですね、江戸時代にここを収める藩が、天候不順とかでその年の収穫が悪いと、”捧げもの”が体の不自由な子ばかりで、地の神が怒っているからだと指摘してきました。で、健康な子供を捧げて鎮めろと要求してきた…」
秋川はちょっと嫌な予感がした…。
「…村を治める藩の役人達に逆らうことのできない村人たちは悩んだ末、結局は順番制を選択したようなんです。そこで最初は、村長の家から子供を差し出すということで…。そのうちに幕府の方でも、この地は国が折れ曲がって裂けない為に守護してくれる神聖な地という解釈が定着しました。幕府はその年が全国的に豊作だと、ここの藩へ恩賞を与えたそうですよ」
「時の幕府がこの地方を特別な場所に捉えたんですか…」
「…ええ。しかし、ここと遠く離れた場所でも地震や噴火が頻繁に起こったりする時期になると、不安に駆られた幕府の命令を受けた藩が子供を捧げるよう強要してきたんです。さすがの村人たちも、自分たちの住んでる場所からはるか離れたところの天災までは勘弁してくれと頑なに拒んだようですよ」
”なんてこった…”、秋川は眉間にしわを作り、首を何度も横に振っていた。
...
「…しかし、幕府の命なんで、藩主だって村人がどんなに懇願しようが聞き入れる訳がありませんよ、あの時代ですから。結局、藩主は申の刻、今でいう午後5時までに神社へ生贄を捧げないと、藩が強制的に手を下すと通告したんです。村人は全員で話し合い、自らで選ぶことはできない。役人が選んだ子で皆納得しようということになった…。苦渋の決断だったでしょうね。しかし…」
克也の話では、通告の時間には6歳の男の子が神社の祠の前で息を引きとっていた。なんと、その子は自分から進んで犠牲になった。”順番”の子は女の子で、かわいそうだからと身代わりを志願したんだろうという言い伝えだと…。
「おそらく子供ながらに、役人は今度順番が回ってくる子を選ぶだろうと考えたんでしょうね…」
「なんとも痛ましい限りだ…。やるせないな」
秋川はここまで聞き終わると、かなり感情移入して左のこぶしを握りしめていたが、”ポイント”は聞き逃さなかった…。