息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
望まざる確信/その3
”向井さん”の連絡先は明らかに携帯であったが、結局、呼び出しはしているが電話口には出なかった。
その後、ここに到着するまでに2度発信したが、いずれも同様で、留守電も設定されていなかったので、先方からすると3度、見覚えがない携帯電話からの着信があったということになる。
女性が自分の携帯に”そのような”非着信履歴となれば、このご時世では警戒するのが普通だろう。
結局、宿に着くまでに”彼女”からの”返信”はなかった。
”今日はかかってこないかな…”
秋川は律子の母親から連絡してもらうことも考えたが、明日の午前中まで待ってみることにした。
そこで秋川は、”向井さん”が律子の携帯に電話してきた動機なり理由を推測してみた。
...
まず、彼女の携帯番号を知り得た過程だが、これは当然、今回のオークション取引で律子と向井祐二が連絡先をメールでやり取りしたことからなのは間違いだろうが、では、それをどうやって知ったか…。
向井祐二は既に自殺で死んでいる。
おそらく、年配の女性と目される”向井さん”は祐二の親戚だろう。
そうであれば、祐二が死んだという知らせを受けて、彼の家に赴くのはごく自然であり、そこで何らかの”手段”により律子の携帯番号を目にした…。
秋川の推測は、そこまですんなりとたどり着いた。
”ならばだ…、その手段は遺言のような書置きか、もしくは彼女がパソコンなり携帯なりで能動的に探り得たか…”
これについては、秋川の結論は前者と捉えることで即、片付いた。
彼女が向井祐二と同居していた場合を除いて…。
”このタイミングで彼女が見ず知らずの律子に連絡するってことは、祐二の”意思”が働いていないと必然性に欠ける。彼女はそれに基づいて、何か律子に伝えたいことがあったんだろう…”
秋川は頭の中でここまで考えまとめた後、入浴することにして、大浴場へと向かった。
...
そして…、風呂から出て部屋に戻ると、秋葉の携帯には一件の着信履歴があった。
それはまさしく”向井さん”からだった…。
秋川はすぐに折り返し発信すると、7回ほどの呼び出しで明らかに年配女性の声が耳に入った。
「もしもし…、夜分恐れ入りますが、向井さんの携帯でよろしいでしょうか?」
「はい、そうですが」
「あのう、私、日中にお電話させてもらいました、千葉の警察の者で、秋川と申します。今回、津藤律子さんのお母さんにそちらから連絡いただいたと伺いまして、それで…」
ここで、向井さんは概ね”察して”くれたようだった。
「まあ、そうだったんですか…。何しろ覚えのない番号だったんで、どなたかと思いましたが…」
「わざわざ、折り返しでご連絡してもらって恐縮です。実は今、静町の近くまで来ていて、旅館にいるんです」
「あら、そうなんですか。それは遠いところご苦労様です…」
彼女の口ぶりは感じがよく、”どうやら好意的に接してくれるようだ”、と秋川はまずは安心した。
「律子さんもここへ向かっていると思い、彼女に会うために来たんです。…向井さん、ぶしつけで大変失礼ながら、まず、彼女の携帯に連絡された経緯をお教えただけないでしょうか?」
「はい、実は…」
”さあ、彼女からは一体どんな返答が帰ってくるのだろうか…”
秋川は思わず息を飲んだ。
そして彼女の”声”を待った。
”向井さん”の連絡先は明らかに携帯であったが、結局、呼び出しはしているが電話口には出なかった。
その後、ここに到着するまでに2度発信したが、いずれも同様で、留守電も設定されていなかったので、先方からすると3度、見覚えがない携帯電話からの着信があったということになる。
女性が自分の携帯に”そのような”非着信履歴となれば、このご時世では警戒するのが普通だろう。
結局、宿に着くまでに”彼女”からの”返信”はなかった。
”今日はかかってこないかな…”
秋川は律子の母親から連絡してもらうことも考えたが、明日の午前中まで待ってみることにした。
そこで秋川は、”向井さん”が律子の携帯に電話してきた動機なり理由を推測してみた。
...
まず、彼女の携帯番号を知り得た過程だが、これは当然、今回のオークション取引で律子と向井祐二が連絡先をメールでやり取りしたことからなのは間違いだろうが、では、それをどうやって知ったか…。
向井祐二は既に自殺で死んでいる。
おそらく、年配の女性と目される”向井さん”は祐二の親戚だろう。
そうであれば、祐二が死んだという知らせを受けて、彼の家に赴くのはごく自然であり、そこで何らかの”手段”により律子の携帯番号を目にした…。
秋川の推測は、そこまですんなりとたどり着いた。
”ならばだ…、その手段は遺言のような書置きか、もしくは彼女がパソコンなり携帯なりで能動的に探り得たか…”
これについては、秋川の結論は前者と捉えることで即、片付いた。
彼女が向井祐二と同居していた場合を除いて…。
”このタイミングで彼女が見ず知らずの律子に連絡するってことは、祐二の”意思”が働いていないと必然性に欠ける。彼女はそれに基づいて、何か律子に伝えたいことがあったんだろう…”
秋川は頭の中でここまで考えまとめた後、入浴することにして、大浴場へと向かった。
...
そして…、風呂から出て部屋に戻ると、秋葉の携帯には一件の着信履歴があった。
それはまさしく”向井さん”からだった…。
秋川はすぐに折り返し発信すると、7回ほどの呼び出しで明らかに年配女性の声が耳に入った。
「もしもし…、夜分恐れ入りますが、向井さんの携帯でよろしいでしょうか?」
「はい、そうですが」
「あのう、私、日中にお電話させてもらいました、千葉の警察の者で、秋川と申します。今回、津藤律子さんのお母さんにそちらから連絡いただいたと伺いまして、それで…」
ここで、向井さんは概ね”察して”くれたようだった。
「まあ、そうだったんですか…。何しろ覚えのない番号だったんで、どなたかと思いましたが…」
「わざわざ、折り返しでご連絡してもらって恐縮です。実は今、静町の近くまで来ていて、旅館にいるんです」
「あら、そうなんですか。それは遠いところご苦労様です…」
彼女の口ぶりは感じがよく、”どうやら好意的に接してくれるようだ”、と秋川はまずは安心した。
「律子さんもここへ向かっていると思い、彼女に会うために来たんです。…向井さん、ぶしつけで大変失礼ながら、まず、彼女の携帯に連絡された経緯をお教えただけないでしょうか?」
「はい、実は…」
”さあ、彼女からは一体どんな返答が帰ってくるのだろうか…”
秋川は思わず息を飲んだ。
そして彼女の”声”を待った。