息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
引渡し/その2


「ああ…、津藤さんですよね、向井です。こんな遠くまで、ホントにすいません。」

さわやかだ!
うん、まあまあだ。
年も30そこそこかな…、たぶん。

「始めまして、津藤です。それから、同行者の西條さんです」
「西條美香です。律子とは、高校の同級生でして。本日はよろしくお願いします」

今にも吹き出しそうになるのを、必死で我慢しているような顔つきで、美香は”ごあいさつ”した。

美香はわかっているのだ。
私が彼に概ね、”合格印”を出したのを。
さすがは、長い付き合いだー(笑)。

...


「ええと…、まずは、”商品”を持ってきますね」

今度は小走りで、向井さんは軽の荷台に乗った。
続いて、手際よく”商品”を開封してから、注意深くバイクをおろし、私の前に持ってきてくれた。

わおー、私のバイクだー!
しばらくの間、私はじーっと、それを眺めていたわ。

向井さんは、私が何か喋るまで黙っている…、といった様子でね。シャイだわ。
気配りも上手のようだし…。



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