息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
集結の地/その6
午前8時35分…。
少し早かったが、秋川は向井月枝との待ち合わせ場所である、静町中心地に近い町立Y公園の駐車場に到着していた。
昨夜、迷った末に遅い時間帯だったが、秋川は津藤律子の母親には連絡を入れた。
居場所の見当がつき、早ければ一両日中には会える、心配はいらないと、ざっくりとではあったが最低限を伝えておいたのだ。
”こういったケースの場合、得てして家族をかえって動揺させ、こちらにいろいろ問い返してくることが多いんだ。中にはパニックを起こしたり、様々な想像をめぐらせて、むしろ不安を増大させてしまう恐れもあるので、中途半端な途中経過の報告はなかなかデリケートな面を含んでいるからな…”
秋川は津藤家に電話をする直前まで、この点を熟考していたのだ。
幸い律子の両親は今のところはとても冷静で、基本的に警察に任せてくれていた。
もっとも、それ以上に、娘に対する信頼感が極めて強いということがあってなのは、秋川や新田の十分理解するところだった。
”要するに、自分の娘が突然消え去るからには、よほど急を要している何かをするためだ。あの子に限って、親が危惧するあらぬ行動など絶対しないはずだ…、と言った信念がるということだ”
電話に出た律子の母親の様子から、秋川の懸念が取りこし苦労だったことで、彼にはこの地に赴いた律子が突きとめたいと願っている答えを共に捜す決意を新たにしたのだ。
...
駐車場に着いて5分ほどすると、秋川のケータイが鳴った。
着信は既に長野方面へ向かっているはずの新田からだった。
予想通り、新田は既に高速に乗り、今群馬県内のPAにいるとのことだった。
「なんだって?律子のケータイにそんな動画が送られていたってのか!」
「はい。けさ早く気付いたので、開封する前に自分に連絡があって、お母さん、その手の操作は心得てらっしゃったんで、俺の一存で開封してもらいました。そしたら、白い煙の律子の物らしきバイクが映像に映っていたそうなんですよ。で、俺のケータイにもデータを転送してもらって、さっき見たんです」
「…」
秋川は声が出なかった。
「文字通り例のもんですよ。しかも、音声では周りから臭いとかって声もはっきり聞こえました。場所は特定できませんが、何か、田舎の公共施設のようなもんが映ってました…」
「わかった。俺にはN署で会った時に見せてくれ」
”メールの着信は昨日の夕方ってことなら、律子が静町近辺でそこに立ち寄って止めてたバイクが煙を吐いた。それを周囲の人が動画撮影して、ケータイを持ち合わせていない律子が、撮影者にアドレスを告げて送信してもらったんだ”
車中での秋川の独り言は結構大きな声だった。
更に、一呼吸を置いてから、今度は音量を下げて呟いた。
”あの煙がまたバイクから出たのか…。俺の想像通りなら、まだ終わってないぞ…”
その後、”何が起こっても不思議はない。急がねば…”が続いたが、これは言葉には出さず、自分に言い聞かせていた。
午前8時35分…。
少し早かったが、秋川は向井月枝との待ち合わせ場所である、静町中心地に近い町立Y公園の駐車場に到着していた。
昨夜、迷った末に遅い時間帯だったが、秋川は津藤律子の母親には連絡を入れた。
居場所の見当がつき、早ければ一両日中には会える、心配はいらないと、ざっくりとではあったが最低限を伝えておいたのだ。
”こういったケースの場合、得てして家族をかえって動揺させ、こちらにいろいろ問い返してくることが多いんだ。中にはパニックを起こしたり、様々な想像をめぐらせて、むしろ不安を増大させてしまう恐れもあるので、中途半端な途中経過の報告はなかなかデリケートな面を含んでいるからな…”
秋川は津藤家に電話をする直前まで、この点を熟考していたのだ。
幸い律子の両親は今のところはとても冷静で、基本的に警察に任せてくれていた。
もっとも、それ以上に、娘に対する信頼感が極めて強いということがあってなのは、秋川や新田の十分理解するところだった。
”要するに、自分の娘が突然消え去るからには、よほど急を要している何かをするためだ。あの子に限って、親が危惧するあらぬ行動など絶対しないはずだ…、と言った信念がるということだ”
電話に出た律子の母親の様子から、秋川の懸念が取りこし苦労だったことで、彼にはこの地に赴いた律子が突きとめたいと願っている答えを共に捜す決意を新たにしたのだ。
...
駐車場に着いて5分ほどすると、秋川のケータイが鳴った。
着信は既に長野方面へ向かっているはずの新田からだった。
予想通り、新田は既に高速に乗り、今群馬県内のPAにいるとのことだった。
「なんだって?律子のケータイにそんな動画が送られていたってのか!」
「はい。けさ早く気付いたので、開封する前に自分に連絡があって、お母さん、その手の操作は心得てらっしゃったんで、俺の一存で開封してもらいました。そしたら、白い煙の律子の物らしきバイクが映像に映っていたそうなんですよ。で、俺のケータイにもデータを転送してもらって、さっき見たんです」
「…」
秋川は声が出なかった。
「文字通り例のもんですよ。しかも、音声では周りから臭いとかって声もはっきり聞こえました。場所は特定できませんが、何か、田舎の公共施設のようなもんが映ってました…」
「わかった。俺にはN署で会った時に見せてくれ」
”メールの着信は昨日の夕方ってことなら、律子が静町近辺でそこに立ち寄って止めてたバイクが煙を吐いた。それを周囲の人が動画撮影して、ケータイを持ち合わせていない律子が、撮影者にアドレスを告げて送信してもらったんだ”
車中での秋川の独り言は結構大きな声だった。
更に、一呼吸を置いてから、今度は音量を下げて呟いた。
”あの煙がまたバイクから出たのか…。俺の想像通りなら、まだ終わってないぞ…”
その後、”何が起こっても不思議はない。急がねば…”が続いたが、これは言葉には出さず、自分に言い聞かせていた。