息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
引渡し/その4


取引が無事済んで、ひと時の間、3人は談笑してた。
すると、ペットのお茶を飲み干した美香が携帯を手にしたぞ。

「じゃあ、今日の記念にツーショット撮りますよ。出品者さん、落札者さん、お地蔵さんの前にお並び下さいませ!」

美香はなんともノリノリで仕切ってる。
だが…。
ちょっと苦笑い気味の向井さん、美香に向かって何か言うようだ。

「えーと、やっぱり、地蔵とこの杉の木の前は…、ちょっと避けたほうがいいかな。一応、縁起ものみたいなもんだし。あっち側で撮りましょ」

そりゃそーだ。
お地蔵さんバックとかありえないでしょ、良く考えればさ。

結局、3人は30メートルくらい離れた場所にバイクを移動して、照れる向井さんと私は、バイクを挟んでツーショット!
取引成立を祝って…。

...


「次は、向井さんの携帯で撮りますよ。」

美香は、向井さんの前に右手を出し、携帯を受取る動作をした。
しかし…。

「あー、この携帯、友人から借りたやつなんで、僕の方は結構です」

向井さんは、ちょっと気まずそうに答えた。

「そうですか。じゃあ、今撮った写真のデータ送りますよ。律子、アドレスとか聞いといて。…それでは、私はこの辺で失礼します。ごゆっくり」

例のニヤケ気味の顔で、美香は私を向いてウインクすると、サーッと帰路につきました(苦笑)。




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