息霊ーイキリョウー/長編ホラーミステリー
共振/その6
そして…!
”それ”は突然起こった…。
秋川の視界は、その瞬間から捉えていた。
しっかと。
”なんてこった‼始まったぞ…‼”
住人たちの2M横にずっと静かに佇んでいたバイクのタイヤあたりから、突然、白く薄い煙が音も立てずに舞い上がってきたのだ。
無論、猛烈な腐臭を伴って…。
「なんだ、これは⁉そこのバイクから煙が起ってるぞ!」
「臭い!なんて臭いなの、これ…」
「皆さん!バイクに近づいちゃダメだ。下がるんだ‼」
秋川は腕で鼻を塞ぎながら、バイクと住人の間に割って入ると、5人に向かって大きな声をあげた。
真っ先に門の方へ駆けて戻ったのは、紅一点の美津江だった。
彼女はそのまま外へ出て行くと、さっきよりさらに数オクターブ上がったヒステリックな声で叫んでいる。
「大変よー‼みんなー、向井のバイクから毒ガスよー‼」
”まずい…。他の住人がここに押し掛けるのは時間の問題だ…。これを許してはパニックになる!”
秋川は冷静ではあったが、極めて危険な局面を導いてしまった自分の行為を後悔する思いも否定できなかった。
...
「ゴホッ、ゴホッ…。みんな、逃げたらイカン‼このバイクを破壊せんと…、祐二の呪いは止まらんぞ!ゴホッ…」
石毛は耐えられない悪臭にむせながらも、後ずさりしている他の3人に向かって檄を飛ばした。
「ダメだ、爺さん!そんなことをしたら、取り返しがつかないことになるぞ‼」
秋川は両手を広げてバイクの前に立ちはだかった。
実際、臭いで倒れそうなくらいだったが、それでも全体を見渡すことは忘れなかった。
それはベテラン現場刑事としての、一種の条件反射が成せるものだったのかもしれない。
ここで秋川は新田に目で合図を送った。
”律子から絶対離れるな!”、と…。
その時、門の外から車のクラションが鳴り響いた。
すでに騒ぎに気付いて向井邸の周り集まっていたが住人たちは、クラクションの主に道を開けると、1台の白い乗用車が飛び込んできた。
...
”ブオーン、キキーッ…‼”
向井邸の庭先で停車すると、すぐに車からは碓井が降りて、走ってきた。
「秋川さん、大丈夫ですか⁉」
「…碓井さん、まずは”あの煙”をしっかり目に刻むんだ。目の前に起こっていることを!」
「うっ…!なんなんだ、このひどい臭いは⁉」
碓井は一瞬、白い煙を発するバイクに向かう足が止まって、ポケットから取り出したハンカチを鼻にあてがった。
「ケータイで撮影してください!動画で記録を取るんです、目の前で起こっているこの真実を‼」
「ああ…、わかった!」
秋川は、ややたじろぐ碓井へせっつくように再度言い放った。
そして…!
”それ”は突然起こった…。
秋川の視界は、その瞬間から捉えていた。
しっかと。
”なんてこった‼始まったぞ…‼”
住人たちの2M横にずっと静かに佇んでいたバイクのタイヤあたりから、突然、白く薄い煙が音も立てずに舞い上がってきたのだ。
無論、猛烈な腐臭を伴って…。
「なんだ、これは⁉そこのバイクから煙が起ってるぞ!」
「臭い!なんて臭いなの、これ…」
「皆さん!バイクに近づいちゃダメだ。下がるんだ‼」
秋川は腕で鼻を塞ぎながら、バイクと住人の間に割って入ると、5人に向かって大きな声をあげた。
真っ先に門の方へ駆けて戻ったのは、紅一点の美津江だった。
彼女はそのまま外へ出て行くと、さっきよりさらに数オクターブ上がったヒステリックな声で叫んでいる。
「大変よー‼みんなー、向井のバイクから毒ガスよー‼」
”まずい…。他の住人がここに押し掛けるのは時間の問題だ…。これを許してはパニックになる!”
秋川は冷静ではあったが、極めて危険な局面を導いてしまった自分の行為を後悔する思いも否定できなかった。
...
「ゴホッ、ゴホッ…。みんな、逃げたらイカン‼このバイクを破壊せんと…、祐二の呪いは止まらんぞ!ゴホッ…」
石毛は耐えられない悪臭にむせながらも、後ずさりしている他の3人に向かって檄を飛ばした。
「ダメだ、爺さん!そんなことをしたら、取り返しがつかないことになるぞ‼」
秋川は両手を広げてバイクの前に立ちはだかった。
実際、臭いで倒れそうなくらいだったが、それでも全体を見渡すことは忘れなかった。
それはベテラン現場刑事としての、一種の条件反射が成せるものだったのかもしれない。
ここで秋川は新田に目で合図を送った。
”律子から絶対離れるな!”、と…。
その時、門の外から車のクラションが鳴り響いた。
すでに騒ぎに気付いて向井邸の周り集まっていたが住人たちは、クラクションの主に道を開けると、1台の白い乗用車が飛び込んできた。
...
”ブオーン、キキーッ…‼”
向井邸の庭先で停車すると、すぐに車からは碓井が降りて、走ってきた。
「秋川さん、大丈夫ですか⁉」
「…碓井さん、まずは”あの煙”をしっかり目に刻むんだ。目の前に起こっていることを!」
「うっ…!なんなんだ、このひどい臭いは⁉」
碓井は一瞬、白い煙を発するバイクに向かう足が止まって、ポケットから取り出したハンカチを鼻にあてがった。
「ケータイで撮影してください!動画で記録を取るんです、目の前で起こっているこの真実を‼」
「ああ…、わかった!」
秋川は、ややたじろぐ碓井へせっつくように再度言い放った。