※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
***
「オスカー!」
人気のない庭園で、私は彼の名前を呼ぶ。
けれど辿り着いたその場所にオスカーはいなかった。
「オスカー……」
(もう遅いのかな)
彼の話を聞くことも、謝ることも、好きだと伝えることも、もうできないのかもしれない。止め処なく零れ落ちる涙を拭いながら、私は俯いた。
(ううん、それじゃダメ)
最初から線を引いて諦めるなんて、もう止めた。
だって私は――――。
「オスカーの側にいたい」
昔の私だったらきっと口に出せなかった願望。自分に自信が無くて、卑屈で、ずっとそんなこと望んじゃいけないんだって思っていたけど。
「ここだけじゃなくて、二人でもっと色んな場所に行きたい」
身分の垣根を越えて、オスカーと一緒に居たいって思っていた。恋人らしく過ごせたらどんなに幸せだろうって、ずっとずっと思っていた。だから――――。
「――――――だから婚約を急いだんだよ?」
その時、背後から優しく抱き締められて、心臓が大きく震えた。それが誰かなんて、振り返らなくても分かる。涙が勢いよく込み上げた。
「オスカー」
「……ミアにとって、身分の違いが大きいって分かっていたから、どうしてもその壁を取り払いたかった。俺がどれだけミアを想っているか、ちゃんと伝えたかったんだ」
オスカーの腕に包まれたまま、私はクルリと身体の向きを変える。見ればオスカーは困ったように笑っていて、胸の辺りがキュッと締め付けられるみたいに熱くなった。
「オスカー!」
人気のない庭園で、私は彼の名前を呼ぶ。
けれど辿り着いたその場所にオスカーはいなかった。
「オスカー……」
(もう遅いのかな)
彼の話を聞くことも、謝ることも、好きだと伝えることも、もうできないのかもしれない。止め処なく零れ落ちる涙を拭いながら、私は俯いた。
(ううん、それじゃダメ)
最初から線を引いて諦めるなんて、もう止めた。
だって私は――――。
「オスカーの側にいたい」
昔の私だったらきっと口に出せなかった願望。自分に自信が無くて、卑屈で、ずっとそんなこと望んじゃいけないんだって思っていたけど。
「ここだけじゃなくて、二人でもっと色んな場所に行きたい」
身分の垣根を越えて、オスカーと一緒に居たいって思っていた。恋人らしく過ごせたらどんなに幸せだろうって、ずっとずっと思っていた。だから――――。
「――――――だから婚約を急いだんだよ?」
その時、背後から優しく抱き締められて、心臓が大きく震えた。それが誰かなんて、振り返らなくても分かる。涙が勢いよく込み上げた。
「オスカー」
「……ミアにとって、身分の違いが大きいって分かっていたから、どうしてもその壁を取り払いたかった。俺がどれだけミアを想っているか、ちゃんと伝えたかったんだ」
オスカーの腕に包まれたまま、私はクルリと身体の向きを変える。見ればオスカーは困ったように笑っていて、胸の辺りがキュッと締め付けられるみたいに熱くなった。