※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「いい加減にしてもらおうか」
それは、ディミトリーから発せられたとは思えない程、冷たく鋭い声音でした。姉達が一気に竦み上がります。アリシャは驚きに目を見張りました。
「僕の行く手を遮った上、婚約者にまで変な言いがかりを付けるなど――――不敬にもほどがある」
言えば、数人の騎士たちが姉達を一斉に取り囲みます。事態を見守っていた群衆たちも、ザワザワと騒ぎ始めました。
(婚約者?)
アリシャは真顔のまま思い切り首を傾げます。けれど、そんなアリシャの様子はそっちのけで、姉達は激しく取り乱していました。
「そっ……そんな! その娘は正真正銘わたくし達の妹で」
「そうです! 言いがかりだなんて、そんなつもりは」
「第一、その子に殿下の婚約者だなんて、とても務まりませんわ! 卑しい妾の子ですもの」
「――――僕も妾の子なのだが、知らないのか?」
ひぃっと小さな悲鳴が上がります。
「しかし、アリシャが君達の妹だというなら丁度良い。王宮でじっくりと話を聞こうじゃないか」
「ほっ……本当ですか?」
姉の一人が希望に瞳を輝かせます。この期に及んで、アリシャに成り代われると思っているのです。ディミトリーはニコリと微笑むと、騎士たちに向かって指で合図を送りました。
「ええ。彼女は自分の家族に、酷い虐待を受け、挙句の果てに森に捨てられていましたから」
「えっ……? あっ……えぇ?」
「まさか、そんな」
「何かの……何かの間違いではございませんこと?」
姉達はしどろもどろになりながら、互いに顔を見合わせます。騎士たちは問答無用で三人を捕らえました。
本来なら、街でアリシャを見つけたとしても、姉達が声を掛けることはありませんでした。あの状況下でアリシャが生きているとは思っていなかったからです。もしもアリシャが生還したら、自分たちが罪に問われる――――その可能性も考えていなかったわけではありません。
けれど、アリシャがディミトリーと一緒に居たことで、姉達は頭に血が上ってしまいました。醜い嫉妬心に駆られたこと――――それが彼女達の運の尽きでした。
それは、ディミトリーから発せられたとは思えない程、冷たく鋭い声音でした。姉達が一気に竦み上がります。アリシャは驚きに目を見張りました。
「僕の行く手を遮った上、婚約者にまで変な言いがかりを付けるなど――――不敬にもほどがある」
言えば、数人の騎士たちが姉達を一斉に取り囲みます。事態を見守っていた群衆たちも、ザワザワと騒ぎ始めました。
(婚約者?)
アリシャは真顔のまま思い切り首を傾げます。けれど、そんなアリシャの様子はそっちのけで、姉達は激しく取り乱していました。
「そっ……そんな! その娘は正真正銘わたくし達の妹で」
「そうです! 言いがかりだなんて、そんなつもりは」
「第一、その子に殿下の婚約者だなんて、とても務まりませんわ! 卑しい妾の子ですもの」
「――――僕も妾の子なのだが、知らないのか?」
ひぃっと小さな悲鳴が上がります。
「しかし、アリシャが君達の妹だというなら丁度良い。王宮でじっくりと話を聞こうじゃないか」
「ほっ……本当ですか?」
姉の一人が希望に瞳を輝かせます。この期に及んで、アリシャに成り代われると思っているのです。ディミトリーはニコリと微笑むと、騎士たちに向かって指で合図を送りました。
「ええ。彼女は自分の家族に、酷い虐待を受け、挙句の果てに森に捨てられていましたから」
「えっ……? あっ……えぇ?」
「まさか、そんな」
「何かの……何かの間違いではございませんこと?」
姉達はしどろもどろになりながら、互いに顔を見合わせます。騎士たちは問答無用で三人を捕らえました。
本来なら、街でアリシャを見つけたとしても、姉達が声を掛けることはありませんでした。あの状況下でアリシャが生きているとは思っていなかったからです。もしもアリシャが生還したら、自分たちが罪に問われる――――その可能性も考えていなかったわけではありません。
けれど、アリシャがディミトリーと一緒に居たことで、姉達は頭に血が上ってしまいました。醜い嫉妬心に駆られたこと――――それが彼女達の運の尽きでした。