※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「クリストフとの結婚のことなんだけど」
校舎の裏、建物に寄りかかり、ロジーナは端的に話を切り出した。グラディアは何も言わず、黙ってロジーナを見つめている。クリストフはロジーナに腕を掴まれたまま、忙しなく視線を彷徨わせていた。
「グラディアはわたしと彼を結婚させたいみたいだけど……わたし、彼と結婚なんてしない。既にお断りしているのよ?」
「…………へ?」
それは思わぬ言葉だった。グラディアとエーヴァルトは互いに顔を見合わせ、そっと首を傾げる。クリストフだけが何とも言えない珍妙な表情を浮かべていた。
「な……ど、どうして? もしかして、わたくしのせいで――――?」
「違うわ。単にこの男の性根が気に喰わないってだけよ」
ロジーナははぁ、と嘆息しつつ、グラディアを真っ直ぐに見つめた。
「良い? そいつはね……わたしとグラディア、二人の女に取り合われる快感を味わいたいってだけの馬鹿男なの。
だって変じゃない。これまで碌にグラディアへ好意を示していたわけでもない癖に、急に『僕はグラディアが好きだから結婚できない』だなんて。
確かにあなた達は幼馴染だし、仲が良かったから、互いに好意を寄せ合うのも無理はないなぁって。だったら、二人が結婚できるようにしたいと思って色々調べてたの。
だけどこいつ、グラディアだけじゃなくて他の女にも似たようなことを言っていたのよ! 頃合いを見てわたしと婚約する気だったらしいけど、おあいにく様。こんな男と結婚生活を送るなんてごめんだもの。キッパリ断ってやったわ」
溜まっていた鬱憤を吐き出すように、ロジーナはそう捲し立てる。グラディアは大きく息を呑み、ギュッと胸を押さえた。
「だったらどうして? どうして直ぐに教えて下さらなかったのですか?」
「――――だって、グラディアはクリストフのことが好きだったでしょう? こんなこと言って信じてもらえるか自信がなかったし、あなたを傷つけるって分かってるんだもの。とてもじゃないけど言えなかったのよ。わたしの方が婚約者に選ばれた負い目もあったしね」
校舎の裏、建物に寄りかかり、ロジーナは端的に話を切り出した。グラディアは何も言わず、黙ってロジーナを見つめている。クリストフはロジーナに腕を掴まれたまま、忙しなく視線を彷徨わせていた。
「グラディアはわたしと彼を結婚させたいみたいだけど……わたし、彼と結婚なんてしない。既にお断りしているのよ?」
「…………へ?」
それは思わぬ言葉だった。グラディアとエーヴァルトは互いに顔を見合わせ、そっと首を傾げる。クリストフだけが何とも言えない珍妙な表情を浮かべていた。
「な……ど、どうして? もしかして、わたくしのせいで――――?」
「違うわ。単にこの男の性根が気に喰わないってだけよ」
ロジーナははぁ、と嘆息しつつ、グラディアを真っ直ぐに見つめた。
「良い? そいつはね……わたしとグラディア、二人の女に取り合われる快感を味わいたいってだけの馬鹿男なの。
だって変じゃない。これまで碌にグラディアへ好意を示していたわけでもない癖に、急に『僕はグラディアが好きだから結婚できない』だなんて。
確かにあなた達は幼馴染だし、仲が良かったから、互いに好意を寄せ合うのも無理はないなぁって。だったら、二人が結婚できるようにしたいと思って色々調べてたの。
だけどこいつ、グラディアだけじゃなくて他の女にも似たようなことを言っていたのよ! 頃合いを見てわたしと婚約する気だったらしいけど、おあいにく様。こんな男と結婚生活を送るなんてごめんだもの。キッパリ断ってやったわ」
溜まっていた鬱憤を吐き出すように、ロジーナはそう捲し立てる。グラディアは大きく息を呑み、ギュッと胸を押さえた。
「だったらどうして? どうして直ぐに教えて下さらなかったのですか?」
「――――だって、グラディアはクリストフのことが好きだったでしょう? こんなこと言って信じてもらえるか自信がなかったし、あなたを傷つけるって分かってるんだもの。とてもじゃないけど言えなかったのよ。わたしの方が婚約者に選ばれた負い目もあったしね」