※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
ずっとずっと、自分を偽って生きてきた。親の前でも良い子を演じて、そうして心の中で悲鳴を上げていた。本当の自分を見せたいと思っているのに、どうすれば良いのか分からない。
そんな中、婚約者として紹介されたのがサラだ。
サラはこれまでに出会った誰よりも可愛く可憐で、これから先の人生で彼女以上の人物に出会うことはないと、幼いアザゼルは思った。心根も素直で、とても優しい少女は、アザゼルの心の拠り所だった。本当の自分は見せられずとも、サラといると優しくなれる。自分が良い人間でいられるような気がした。
けれど月日が経つにつれ、今度は罪悪感がアザゼルを襲った。自分はサラを騙している。偽りの自分だから、サラは自分と一緒にいてくれる――――そう思いながら生きることは、とても辛かった。
だからアザゼルは自分を殺そうと思った。
本当の自分を悪魔に捧げ、偽りの自分が本当の自分となる。そんな非現実的で自分に都合の良い何かを信じて、必死に方法を探した。
そしてある日、アザゼルの前に悪魔は現れた。
アザゼルは悪魔に契約を持ち掛けた。けれど悪魔は首を横に振る。アザゼルは落胆した。自分の願いは叶わない。これから先も罪悪感に苛まれながら、偽りの自分を生きていくのか。それともいっそのこと、ここで命を絶つべきなのか――――と。
「……一つ条件を飲んでくれたら、君との契約を考えても良い」
打ちひしがれるアザゼルに、悪魔はそんなことを囁いた。アザゼルが顔を上げると、悪魔は穏やかな笑顔でこう言った。
「君の大事なサラと婚約破棄をしておいで?それが出来たら契約してあげよう」
アザゼルは言葉を失った。
サラを失うことはアザゼルにとって死ぬに等しい。けれど、偽りの自分を本当の自分にしたいと――――悪魔と契約したいと思い至ったのも全て、サラを騙すのが嫌になったからだ。サラと婚約を破棄すれば、少なくともこんな罪悪感からは逃れられる。
(それに、悪魔が本当に契約をしてくれるとも限らない)
ならばいっそのこと、本当の自分を出してから、全てを終わりにすることだって悪くはないのかもしれない。
「分かった」
アザゼルは悪魔にそう告げると、生まれて初めて本当の自分を表へ出した。
そんな中、婚約者として紹介されたのがサラだ。
サラはこれまでに出会った誰よりも可愛く可憐で、これから先の人生で彼女以上の人物に出会うことはないと、幼いアザゼルは思った。心根も素直で、とても優しい少女は、アザゼルの心の拠り所だった。本当の自分は見せられずとも、サラといると優しくなれる。自分が良い人間でいられるような気がした。
けれど月日が経つにつれ、今度は罪悪感がアザゼルを襲った。自分はサラを騙している。偽りの自分だから、サラは自分と一緒にいてくれる――――そう思いながら生きることは、とても辛かった。
だからアザゼルは自分を殺そうと思った。
本当の自分を悪魔に捧げ、偽りの自分が本当の自分となる。そんな非現実的で自分に都合の良い何かを信じて、必死に方法を探した。
そしてある日、アザゼルの前に悪魔は現れた。
アザゼルは悪魔に契約を持ち掛けた。けれど悪魔は首を横に振る。アザゼルは落胆した。自分の願いは叶わない。これから先も罪悪感に苛まれながら、偽りの自分を生きていくのか。それともいっそのこと、ここで命を絶つべきなのか――――と。
「……一つ条件を飲んでくれたら、君との契約を考えても良い」
打ちひしがれるアザゼルに、悪魔はそんなことを囁いた。アザゼルが顔を上げると、悪魔は穏やかな笑顔でこう言った。
「君の大事なサラと婚約破棄をしておいで?それが出来たら契約してあげよう」
アザゼルは言葉を失った。
サラを失うことはアザゼルにとって死ぬに等しい。けれど、偽りの自分を本当の自分にしたいと――――悪魔と契約したいと思い至ったのも全て、サラを騙すのが嫌になったからだ。サラと婚約を破棄すれば、少なくともこんな罪悪感からは逃れられる。
(それに、悪魔が本当に契約をしてくれるとも限らない)
ならばいっそのこと、本当の自分を出してから、全てを終わりにすることだって悪くはないのかもしれない。
「分かった」
アザゼルは悪魔にそう告げると、生まれて初めて本当の自分を表へ出した。