※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
15.王太子の恋路、邪魔するべからず(1)
「アンジェラに話があるんだ」
男の声が冷ややかに響いた。色素の薄い金の髪が煌めき、鮮やかな翠の瞳がアンジェラを鋭く射貫く。彼の腕には大きな瞳を潤ませた女性が一人、ギュッとしがみ付いていた。
(――――ついにこの時が来てしまったのね)
アンジェラの心臓がドクンと嫌な音を立てて鳴り響く。
男の名はフレデリック。この国の王太子であり、アンジェラの婚約者だ。
対する女性は伯爵令嬢シャーロット。小柄で緩やかな髪に、愛らしい顔立ちを持つ、アンジェラとは正反対の女性だ。
「承知しました」
そう言ってアンジェラはクルリと踵を返す。
今は夜会の最中だ。周囲を巻き込むわけにはいかないし、フレデリックも醜聞をさらしたくはなかろう。そう思っての行動だったのだが。
「嫌っ! 怖いわ……アンジェラさまと一緒に人気のないところに行くなんて嫌よ」
異を唱えたのはシャーロットだった。ウルウルと瞳を潤ませ、上目遣いにフレデリックを見上げている。
「シャーロット嬢、けれどそれでは――――」
フレデリックはほんのりと眉間に皺を寄せ、気遣わし気にアンジェラを見遣る。
「わたくしがあの方にされたこと、フレデリックさまもご存じでしょう? たとえフレデリックさまが付いて下さっていたとしても、恐ろしくて……。人の目の届かない場所に行くなんて、わたくしにはできませんわ」
そう言ってシャーロットはしくしくと泣き始めた。声も大きいため、周囲の視線も徐々に集まり始めている。アンジェラは何も言わぬまま、毅然とした表情で二人のことを見つめていた。
「――――シャーロット嬢がこう言うんだ。仕方がないからここで話そうか」
フレデリックはそう言ってニコリと微笑む。アンジェラは唇を引き結びつつ、コクリと頷いた。
男の声が冷ややかに響いた。色素の薄い金の髪が煌めき、鮮やかな翠の瞳がアンジェラを鋭く射貫く。彼の腕には大きな瞳を潤ませた女性が一人、ギュッとしがみ付いていた。
(――――ついにこの時が来てしまったのね)
アンジェラの心臓がドクンと嫌な音を立てて鳴り響く。
男の名はフレデリック。この国の王太子であり、アンジェラの婚約者だ。
対する女性は伯爵令嬢シャーロット。小柄で緩やかな髪に、愛らしい顔立ちを持つ、アンジェラとは正反対の女性だ。
「承知しました」
そう言ってアンジェラはクルリと踵を返す。
今は夜会の最中だ。周囲を巻き込むわけにはいかないし、フレデリックも醜聞をさらしたくはなかろう。そう思っての行動だったのだが。
「嫌っ! 怖いわ……アンジェラさまと一緒に人気のないところに行くなんて嫌よ」
異を唱えたのはシャーロットだった。ウルウルと瞳を潤ませ、上目遣いにフレデリックを見上げている。
「シャーロット嬢、けれどそれでは――――」
フレデリックはほんのりと眉間に皺を寄せ、気遣わし気にアンジェラを見遣る。
「わたくしがあの方にされたこと、フレデリックさまもご存じでしょう? たとえフレデリックさまが付いて下さっていたとしても、恐ろしくて……。人の目の届かない場所に行くなんて、わたくしにはできませんわ」
そう言ってシャーロットはしくしくと泣き始めた。声も大きいため、周囲の視線も徐々に集まり始めている。アンジェラは何も言わぬまま、毅然とした表情で二人のことを見つめていた。
「――――シャーロット嬢がこう言うんだ。仕方がないからここで話そうか」
フレデリックはそう言ってニコリと微笑む。アンジェラは唇を引き結びつつ、コクリと頷いた。