※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
(――――シャーロットさまの仰る通りだわ)


 いくら婚約者だからと言って、王族を相手に独占欲を出すなど、本来あってはならないことだ。恥ずかしさのあまり、アンジェラは密かに顔を歪める。


「申し訳ございません、殿下――――」
「俺はね、アンジェラ。嬉しかったんだよ」


 アンジェラの謝罪の言葉をフレデリックが遮った。彼はゆっくりと腕を解き、アンジェラのことを優しく見下ろす。


「ずっとずっと、アンジェラの一番になりたかった。君の想いが知りたかった。俺にとってアンジェラは、唯一無二の大切な人だから」


 その瞬間、アンジェラの瞳から、涙がポロリと零れ落ちる。もう何年も涙を流すことなどなかったというのに、一度流れ出すと、堰を切ったように止まらなかった。フレデリックはアンジェラの背中を撫でつつ、頬を伝う涙を拭う。


「妃が強くなきゃいけないのは本当。意地の悪い貴族は山程いるし、国民だって皆が皆王家に好意的ってわけじゃないから。
だけど、本当に辛い時は俺を頼って良いんだ。全部をアンジェラ一人で抱え込む必要なんてない。アンジェラが安心して甘えられるよう、俺も努力する。アンジェラを一人の女性として幸せにできるよう頑張るから」


 フレデリックはそう言って、アンジェラのことを見つめる。彼の眼差しが、力強い腕が、アンジェラの心を温かく溶かしていく。


「好きだよ、アンジェラ。これから先もずっと、俺の側に居て欲しい」


 フレデリックの言葉にアンジェラは大粒の涙を零す。それから二人は顔を見合わせると、目を細めて笑うのだった。
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