※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
16.君は友達(3)
***
そこから先は、目まぐるしい勢いで色んなことが動いた。
両親は突然のことに驚きつつも、二人の婚約を快諾してくれた。実際の婚約までには少し時間が掛かるものの、両家は内々に約束を取り交わす。
アグライヤの予想通り、二人の関係は翌日には学園や貴族達の噂になっていた。こうなっては、もう引き返すことはできない。噂を事実と認め、互いに婚約者として振る舞った。
「どんな縁談にも頷かなかったアグライヤ様が……」
周りからそんな風に言われるたび、アグライヤは恥ずかしくて堪らなくなる。『不可抗力だったのだ』と言い訳して回りたくなった。
ヴァルカヌスとの婚約に一番驚き、戸惑っているのは他でもない――――アグライヤ自身だ。
(どんなに好きでも、ヴァルカヌスとの恋が実ることは無い……そう思っていた)
それどころか、一生想いを打ち明ける気すらなかった。あまりにも急転直下の恋模様に、心も身体も追い付いていない。
(いや……厳密に言えば、恋が実ったわけではないのだが)
ヴァルカヌスは恐らく、ウェヌスへの当てつけでアグライヤとの結婚を決めたのだろう。たまたまアグライヤが側に居たから――――アグライヤがそう口走ったから――――決してアグライヤを想っているからではない。
(わたしもあいつも、いずれは結婚しなければならないし、単に都合が良かっただけ)
そうと分かっているから、ずっと好きだった人との結婚だというのに、素直に喜ぶことが出来ずにいる。
(わたしはあいつの友達)
夫婦になっても、きっとヴァルカヌスの気持ちは変わらない。けれどアグライヤの方は結婚後も、これまで通りに彼と接することができるのだろうか?
(多分無理だ)
それでも、もうどうすることもできやしない。ズキズキと痛む胸を押さえ、アグライヤは深いため息を吐いた。
そこから先は、目まぐるしい勢いで色んなことが動いた。
両親は突然のことに驚きつつも、二人の婚約を快諾してくれた。実際の婚約までには少し時間が掛かるものの、両家は内々に約束を取り交わす。
アグライヤの予想通り、二人の関係は翌日には学園や貴族達の噂になっていた。こうなっては、もう引き返すことはできない。噂を事実と認め、互いに婚約者として振る舞った。
「どんな縁談にも頷かなかったアグライヤ様が……」
周りからそんな風に言われるたび、アグライヤは恥ずかしくて堪らなくなる。『不可抗力だったのだ』と言い訳して回りたくなった。
ヴァルカヌスとの婚約に一番驚き、戸惑っているのは他でもない――――アグライヤ自身だ。
(どんなに好きでも、ヴァルカヌスとの恋が実ることは無い……そう思っていた)
それどころか、一生想いを打ち明ける気すらなかった。あまりにも急転直下の恋模様に、心も身体も追い付いていない。
(いや……厳密に言えば、恋が実ったわけではないのだが)
ヴァルカヌスは恐らく、ウェヌスへの当てつけでアグライヤとの結婚を決めたのだろう。たまたまアグライヤが側に居たから――――アグライヤがそう口走ったから――――決してアグライヤを想っているからではない。
(わたしもあいつも、いずれは結婚しなければならないし、単に都合が良かっただけ)
そうと分かっているから、ずっと好きだった人との結婚だというのに、素直に喜ぶことが出来ずにいる。
(わたしはあいつの友達)
夫婦になっても、きっとヴァルカヌスの気持ちは変わらない。けれどアグライヤの方は結婚後も、これまで通りに彼と接することができるのだろうか?
(多分無理だ)
それでも、もうどうすることもできやしない。ズキズキと痛む胸を押さえ、アグライヤは深いため息を吐いた。