※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
18.感情が欠落しているからと婚約破棄された令嬢は、幼馴染と微笑み合う(1)
「婚約を破棄したい」
それは、わたくしがずっとずっと恐れていた瞬間だった。
目の前には12歳の頃に婚約したアルバート。彼の傍らには、最近彼の側でよく見かけたミリー子爵令嬢がいて、しっかりと手を握っている。心臓がめちゃくちゃ痛くて、今にも涙が零れそうな中、わたくしはアルバートを見つめた。
「どうしてですの? 理由を聞かせていただけませんか?」
心の中はパニックで、ぐちゃぐちゃで堪らないのに、こんな時でもわたくしの声は震えもしない。感情が欠落したみたいな氷みたいな冷たい声音に、わたしは絶望した。
「君といるとこちらまで心が冷たくなる。一緒に居ても楽しくないんだ」
(あぁ……やはり)
悲しくて苦しくて堪らないのに、表情筋はちっとも仕事をしてくれない。彼にはきっと、氷みたいに冷たい侯爵令嬢クリスティーナの顔が見えているのだろう。
「それで、わたくしとの婚約を破棄し、ミリー様と婚約をなさるのですね」
「……そういうことだ」
五年間、愛してやまなかったその美しい顔が、わたくしを見つめながら苦し気に歪む。
こんなに……こんなにも好きなのに、わたくしはその想いを一ミリすらも伝えることが出来なかった。考え直してほしいと、あなたが好きだと、そう伝えたいのに、わたくしの唇は思い通りに動いてはくれない。
「承知いたしました」
結局、最後までわたくしは自分の想いと真逆の言葉を吐いた。もう、アルバートの顔を見ることは出来なかった。
それは、わたくしがずっとずっと恐れていた瞬間だった。
目の前には12歳の頃に婚約したアルバート。彼の傍らには、最近彼の側でよく見かけたミリー子爵令嬢がいて、しっかりと手を握っている。心臓がめちゃくちゃ痛くて、今にも涙が零れそうな中、わたくしはアルバートを見つめた。
「どうしてですの? 理由を聞かせていただけませんか?」
心の中はパニックで、ぐちゃぐちゃで堪らないのに、こんな時でもわたくしの声は震えもしない。感情が欠落したみたいな氷みたいな冷たい声音に、わたしは絶望した。
「君といるとこちらまで心が冷たくなる。一緒に居ても楽しくないんだ」
(あぁ……やはり)
悲しくて苦しくて堪らないのに、表情筋はちっとも仕事をしてくれない。彼にはきっと、氷みたいに冷たい侯爵令嬢クリスティーナの顔が見えているのだろう。
「それで、わたくしとの婚約を破棄し、ミリー様と婚約をなさるのですね」
「……そういうことだ」
五年間、愛してやまなかったその美しい顔が、わたくしを見つめながら苦し気に歪む。
こんなに……こんなにも好きなのに、わたくしはその想いを一ミリすらも伝えることが出来なかった。考え直してほしいと、あなたが好きだと、そう伝えたいのに、わたくしの唇は思い通りに動いてはくれない。
「承知いたしました」
結局、最後までわたくしは自分の想いと真逆の言葉を吐いた。もう、アルバートの顔を見ることは出来なかった。