※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
19.毒姫の逆襲〜わたくしからもいくつか、よろしいでしょうか?〜(1)
「キトリ・モリーナ!俺は貴様との婚約を破棄する!」
煌びやかな広間に木霊するテノールボイスに、皆が一斉に振り返る。
(あぁ……やっぱり今年も現れたのか)
俺は小さくため息を吐きながら、声の主を覗き見た。
広間の中央を陣取り、下卑た笑みを浮かべているその男は、名をアロンソという。俺の中でさして印象に残っていないが、同級生の一人のはずだ。
というのも今日、この場で開かれているのは、俺たちの卒業パーティー。広間に集まっているのは同級生のみ、ということになる。
「ふっ……おまえのような女でも、さすがに婚約破棄は堪えるのか。何故、という顔をしているな。ならば教えてやろう。俺は真実の愛を――――ネリーンという素晴らしい女性を見つけたんだ!」
いやいや。
俺の見る限り、キトリはとても堪えているようには見えない。平然と冷めた目をしているし、もの言いたげな様子だってない。
大体、真実の愛が云々って、言葉にした時点で薄っぺらすぎて笑えてしまう。こんな風に人前で婚約破棄を断行するような人間に、理解できるような代物とは到底思えない。
俺は笑いを噛み殺しながら、ゆっくりと目を細めた。
「ネリーンはお前とは正反対の理想的な令嬢だ。花のように美しく可憐で上品で、いつだって笑顔で。いつもガミガミと口うるさいお前とは大違いだ」
アロンソはそう言って、彼の傍らに佇む女性をウットリと見つめた。
ネリーン・クルーズ公爵令嬢。俺のクラスメイト。
ストロベリーブロンドの豊かな髪の毛に、翠色の大きな瞳。薔薇色の頬に鮮やかな紅色の唇は、確かに美しい。アロンソの花のように、という表現はあながち間違っていないように思う。口数が少なく美しい彼女は、クラスの中でも高嶺の花として扱われていた。
「俺はお前との婚約を破棄し、ネリーンと婚約する!彼女も俺の想いを受け入れてくれた。お前の出る幕はもうないのだ」
アロンソはそう言って勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
煌びやかな広間に木霊するテノールボイスに、皆が一斉に振り返る。
(あぁ……やっぱり今年も現れたのか)
俺は小さくため息を吐きながら、声の主を覗き見た。
広間の中央を陣取り、下卑た笑みを浮かべているその男は、名をアロンソという。俺の中でさして印象に残っていないが、同級生の一人のはずだ。
というのも今日、この場で開かれているのは、俺たちの卒業パーティー。広間に集まっているのは同級生のみ、ということになる。
「ふっ……おまえのような女でも、さすがに婚約破棄は堪えるのか。何故、という顔をしているな。ならば教えてやろう。俺は真実の愛を――――ネリーンという素晴らしい女性を見つけたんだ!」
いやいや。
俺の見る限り、キトリはとても堪えているようには見えない。平然と冷めた目をしているし、もの言いたげな様子だってない。
大体、真実の愛が云々って、言葉にした時点で薄っぺらすぎて笑えてしまう。こんな風に人前で婚約破棄を断行するような人間に、理解できるような代物とは到底思えない。
俺は笑いを噛み殺しながら、ゆっくりと目を細めた。
「ネリーンはお前とは正反対の理想的な令嬢だ。花のように美しく可憐で上品で、いつだって笑顔で。いつもガミガミと口うるさいお前とは大違いだ」
アロンソはそう言って、彼の傍らに佇む女性をウットリと見つめた。
ネリーン・クルーズ公爵令嬢。俺のクラスメイト。
ストロベリーブロンドの豊かな髪の毛に、翠色の大きな瞳。薔薇色の頬に鮮やかな紅色の唇は、確かに美しい。アロンソの花のように、という表現はあながち間違っていないように思う。口数が少なく美しい彼女は、クラスの中でも高嶺の花として扱われていた。
「俺はお前との婚約を破棄し、ネリーンと婚約する!彼女も俺の想いを受け入れてくれた。お前の出る幕はもうないのだ」
アロンソはそう言って勝ち誇ったような笑みを浮かべている。